第83話 軽トラの新機能

 新たにドロップしたオレンジ色の箱。

 

 これは、以前軽トラのダッシュボードに吸い込まれていった、黒色の箱と同じ大きさ、形をしていた。


「これは、あたらしいカートリッジなんでしょうか?」


「そう考えるのが自然だな。今回はどんな能力なんだろう?」


「にゃー、チキントリニク食べ放題になるとか、チュー〇が毎日出てくるとかならいいのにニャ」


「それはそれで微妙だな」


 キッチンカーのことかな?





 前回、黒いカートリッジの時の能力は、『トランス』。ダンジョン内で動かないものを動かし、ダンジョン内でしか発動しない能力を外でも発動させるといったものだ。

 そして、確かその時はスロットに入れて融合する前から、その能力を発揮していたような気がするが、今回のはどうなのだろうか。


 いまのところ、軽トラの外見上に特に変化は見られていない。

 なんとなくだが、今回のこの箱は融合させないと能力を発揮しないような気がする。


「じゃあ、はめてみるか」


「いやん、先輩ったら」


「その口を閉じなさい」


 オレンジ色のカートリッジを、軽トラダッシュボードにあるスロットに入れると、一瞬、軽トラがまばゆい光に包まれる。


 そして、その光が収まったときに目の前に現れたのは。


「これは、なんか一気にハイテクになったな。」


 軽トラのフロントガラス。運転席側から見るそれには、半透明のディスプレイ画面が現れ、そこにはこのダンジョンと思われるフロアマップと、現在地を示す黄色の光点が現れた。


 ヘッドアップディスプレイ。(Head-Up Display、略称: HUD、ハッド)


 従来のカーナビ等の画面を、運転を妨げないように半透明にしてフロントガラスに投影する技術。

 これによって、運転者は視点をずらさずに様々な情報を得ることが出来るため、もともとは戦闘機のキャノピーなどで取り入れられてきた技術である。


 ふと手元を見ると、ハンドルの中にはゲームのコントローラーのような、十字キーと数個のボタンが現れている。おそらくは、これでカーナビの画面などを操作するのだろう。


「にゃー、すごいのにゃ。これでゲームとかもできるのかにゃ?」


「DVDとか、USB差すところとかありませんかね。大画面で映画とか見たいです。パソコン繋げたいですね。」


 いや、さすがにそこまではできないと思うのだが。出来たら便利すぎて、食事と睡眠、風呂以外はダンジョンから出られなくなってしまうな。




「あ、このマップ、このフロアですね。すぐそばに階段があるみたいですよ?」


「ほんとにゃ。ここから隣の隣の部屋に階段があるにゃ。にゃんか、もっと早く教えてくれればよかったのににゃ。」


「それにはオレも同意する」


 こうして、マップがあらかじめインストールされている機能を兼ね備えたダンジョン用のカーナビが、ヘッドアップディスプレイという思いもよらないハイテクな姿で軽トラにビルドインされたのであった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る