第82話 レベルアップ、そして新たな箱。

 オレは、毒状態のまま軽トラに乗って移動してみた。

 

 案の定、毒による継続ダメージは乗ってこない。やはり、徒歩でなければ継続ダメージは受けないようだ。


 だが、鬼の形相でポーションを勧めるマナミサンと美剣みけの剣幕に押され、オレは高価な紫色の解毒ポーションを飲み干し、結局毒は治療した。念のために美剣が以前ドロップさせた緑の体力回復ポーションも飲まされた。ぐふっ、苦い。


「うーん、この先毒を使う魔物も増えてくるんだろうなー。毎回ポーションじゃ採算取れなくなっちまう」


「でも、お金より命の方が大切ですよ?」


「まあ、それは確かに。とりあえず、早いとこ地上に戻る道を見つけなきゃな」


「にゃー、おなか減ってきたのにゃ」


「缶切り出たドロップから、缶詰なら食えるんじゃないか?」


「にゃー、箸もスプーンもないのにどうやって食べるのにゃ? わたしはネコの姿じゃないんにゃよ?」


「くっ、そうだった……」


「物干しざお、2本で箸の代わりになりませんかね?」


「いや、ならんだろ」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


このフロアも、回廊や玄室、それなりの広さを探索した。


だが、いまだ上の階に戻る階段は見つけられていない。


 ダンジョン内なので時間の経過はわかりにくいが、作動するスマホの画面によるといつもなら夕食を終えて風呂に入っているような時間になっていた。


「どうします? そろそろ野営とかにシフトしますか?」


「にゃー、カップ麺をお湯なしでバリバリ食うのかニャ?」


「うん、次の玄室を開けてみて、今日は最後にしよう。その後は安全な場所を探そうか。」


「「はい(にゃ)」」


 まあ、安全地帯を探すといっても『結界防御』のある軽トラの中ならば安全なのだが。だが、寝ている傍で軽トラがバシバシ攻撃されていたのでは落ち着かないのも確かであるので、やはり魔物が出ない場所があればそれに越したことはないのだ。


 次の玄室――。


 出現したのは齧歯バニー25体。8~9体が3グループだ。

 数は多いが、毒を持っていない分、クリティカルにだけ気をつければいい。


 時間はかかったが危なげなく倒すと、あの感覚がやってきた。


「またレベルが上がったな。これで4か」


「はい、私も上がりました!」


「にゃー、美剣はまだ上がらないニャ」


 美剣はレベルがオレたちより高いからな、必要な経験値もそれなりに多いのだろう。


 新たに覚えたスキルは……またあとで検証しよう。ちなみに、かすかには期待していたのだが、やはりオレに回復魔法は生えてこない……。ちくせう。


「にゃ! また箱が出てきたニャよ!」


 宝箱を開けた美剣が叫ぶ。


 美剣の手にあるのは――


 オレンジ色の箱カートリッジだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る