第77話 デカい奴

 ―なにものかにであった!―


 でかい


 その玄室には、通常の3倍くらいの大きさの灰色狼と、その下僕と思われる通常のコボルドが9匹×3グループポップしていた。


「これは、フロアボスか!?」


 通常の3倍でかいが、速さはどうなのかな? 色が赤くないしツノもないから大丈夫だろう。


「えーと、真奈美が『殺陣たて』で雑魚を頼む。美剣みけとオレでデカい奴をやる。」


「「はい(なのにゃ)!」」



 真奈美がサクサクと雑魚コボルドを蹴散らしていく。


 目の前に開いたスペースに飛び込み、デカい奴の鼻面に盾を構えてひと当て。

 そして、オレの後ろに『隠れる』をしていた美剣が飛び出して一閃――。


「にゃっ!?」


「なんだと、美剣の一撃でもまだ倒せないだと!」


 デカい灰色狼は、美剣の一撃を耐えきった。

 美剣はいつも通り首筋を狙ってはいたが、クリティカルも発動しなかったようだ。


「さすがに強いか。『盾打撃シールドバッシュ』!」


「『ファイアー火魔法!』」


「『にゃにゃーニャニャー!』」


 全員による攻撃でボス狼をやっつけた。


 マナミサンが雑魚を全て一掃できるスキルがあるからいいが、雑魚と戦っているあいだに、デカいのに突っ込んでこられたりしたらもっと苦戦したであろう。


 デカい狼を倒した後には宝箱が出現しており、美剣が開けるとその中からは『カギ』が出てきた。


「カギが出るということは、次のフロアに行く扉にカギがかかっているということですかね?」


「なんだろう、このウィ〇ードリーから突然ドル〇ーガになったような気分は。」


「先輩?」


「いや、何でもない。次の部屋に向かおう」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 次の玄室――


 いつものように軽トラで扉を押し開け、その中に魔物は――いなかった。


 代わりに、部屋の中央には一つの宝箱が鎮座している。


「美剣、頼むぞ」


「はいにゃ……って、これは手ごわそうにゃよ?」


 美剣が宝箱の罠解除に戸惑うとは珍しい。というか、初めてだ。


「軽トラで轢いて開けようか?」


「罠のほかにカギもかかっているから多分無理ニャ。」


「さっきのデカいのが落としたカギを使うのかしら?」


「あれは別にゃね。サイズが違うニャ。おっと、これをこうしてにゃ」


「ちなみにどんな罠なんだ?」


「にゃんか、どっかに飛ばされるみたいな感じニャ」


「テレポーターか……それだと軽トラで轢いたら発動して転移しちまうな。慎重に頼むぞ」


 テレポーターというのは、某ダンジョンゲームの中では最悪最凶の罠だ。パーティーメンバーがランダムにダンジョン内のどこかに飛ばされ、場合によっては壁の中に飛ばされてそのまま消失ロストしてしまうこともある。


  カチッ


「「「あっ」」」

 

「みんな! 軽トラに飛び乗れ!」



―おっと! テレポーター!―





――軽トラと3人は、まばゆい光に包まれた。

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