第74話 拡張スロット

 軽トラ全体が一瞬激しい光を放ち、ダッシュボードの隙間にはめたトランス黒い箱がみるみる奥に取り込まれていく。


「これは……融合……しているのか?」


 取り込まれたトランス黒い箱は影も形もなくなり、そこにはダッシュボードの細長い四角の空間のみが残っている。


「となると、この穴は拡張スロットという事になるのか?」





ダンジョン内で美剣がドロップさせたと思われるトランス黒い箱


 それが、軽トラの拡張スロット? に形状が一致し、ファミコ〇にROMカセットを差すかのようにセットすると取り込まれて融合する。


 これでは、まるでこの軽トラのためだけにあるアイテムではないか。


「うーん、この軽トラのみに適合するドロップ品。当然ながら他のダンジョンでは出ないんだろうな……。我が家のダンジョンだけなんかおかしいのかな?」


「いや、他でも似たようなことはありうると思いますよ? 例えばその土地に合った地方特産の特殊ドロップ品とか、それってダンジョンの個性ですよね? あと、海外では軍事転用できる魔石の燃料変換機エナジーコンバーターをドロップさせたのは軍隊とエネルギー研究者の合同チームですし、探索者の意思とか、所属とかがドロップにも反映されると考えれば辻褄は合うのでは?」


 おお、マナミサンが長文セリフを。脳筋かと思っていたが以外と頭脳派? なんてことを思っていたら脇腹をつねられた。痛い痛い。


「その理屈で行くと、ダンジョンの外でも人の姿でいたいって美剣が思ったから、 こんな能力のドロップ品が出たと考えれば筋は通らないこともないな。」


「でも、お店でのお買い物はできないから中途半端にゃね」


「それは、たぶんネコさんの姿でも愛されたいという気持ちが潜在意識にあったとかではないでしょうかね。あとは、人間の姿だと〇ュールが食べられないとか」


「はうっ! 確かにチュー〇はネコの姿でないと美味しく感じないのにゃ!」


「おまえ、いつの間に人の姿でチュ〇ル食ってたんだよ」


「それは乙女の秘密なのニャ」



 まあチュー〇はいいとして。


 ということはだ。


 これからも、オレたちの意思に沿った有用なドロップ品が出てくる可能性は高いわけか。例えば、軽トラの拡張スロットに入れられるような物とかが。


 ちなみに、融合後の軽トラは、トランスの能力をしっかりと発揮していた。




「ところで、じゃあダンジョン内でもスマホが使えるって能力はどこからきたんだろうな?」


「あ、それは美剣もスマホ欲しいって思ってたからだと思うニャ」


「なんで?」


「だって、あの日、ご主人はスマホに入ったまにゃみからの連絡を見て出かけて行ったニャ。美剣も人の姿でスマホ使えたら、ご主人はわたしともっと一緒にいてくれるんじゃないかって思ってたにゃ」


「まあ、美剣ちゃんって健気ですね! 先輩! 美剣ちゃんを愛してあげてください! さあ! 今すぐ! ここで! 美剣ちゃんの拡張スロットに先輩の熱いカートリッジを!」




 このあと、めちゃくちゃ……してません。

 

 照れくさかったので家に戻りました……。


 あと、マナミサンにはチョップを一撃入れておいた。


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