第73話 SSダンジョンお正月イベント?

「ご主人」


「なんだ」


「今日は、お正月とかいうやつじゃにゃいのか?」


「ああ、そうだ。正確には元旦だがな」


「で、お祝いするのかニャ?」


「お祝いとはちょっと違うが、いいもの食ったりはするぞ」


「わーいなのにゃ」


「あ、先輩、美剣みけちゃん、ちょっとこれ見てくださいな」


「ん(にゃ)?」


「お正月限定で、ダンジョンにポップする魔物がいるらしいですよ! レアドロップがおいしいらしいです!」


 探索者専用サイトには、お正月限定ポップの魔物情報が載っている。

 そのページは、まるでなんかのネトゲのイベント紹介のようだ。


「この展開は……以前もどこかであったような……」


「気のせいにゃよ」









◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「なんだありゃ」


「鏡もち……なんでしょうか……」


「にゃー、ちょっとかわいいにゃー」


 目の前にはスライム。

 しかし、いつもと様相が違っている。


 某国民的有名RPGに出てくるようなスライムが、3段重ねになって、下の2体は白、一番上の1体はオレンジ色になっている。下が大きく、上が小さい。


「鏡もちさんって、倒してもいいのかしら……」


「いや、いいだろ」


「美味しそうなのにゃ」


 美剣が鏡もち? を瞬殺する。


「なんか落としたニャよ?」


「これは……お餅?」


「そのまんまニャ」


「お正月期間は魔物の種類に関係なく、お正月の食材がドロップするって書いてましたよ?」


「繰り返すが……ダンジョンって……なんなんだろうな。あのときもレアドロップがおいしいって、そっちの意味だったんだよな……。」


「にゃー! ほかのものも出るかもなのニャ―!」


「とりあえず、おせちの具材はコンプリートしようか」


「はいにゃ!」




 次のドロップはのし袋に入った現金一万円であり、その日、ネットでは超レアドロップでお年玉が出たと話題にはなったが、日本銀行が発行した紙幣ではないため使用はできないと国より通達が出された。

 なお、その一万円札は札の絵柄がいろんな魔物の肖像画となっており、一部の好事家や研究者が所望したため、額面の一万円(販売価格5万円、税抜き後1万円)で探索者センターが買い取ることになり、実質のお年玉となったのであった。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ダンジョンでおせち料理とお年玉を手に入れたオレたちは、近所の神社に初もうでに出かけた。もちろん、ネコカゴにはいった美剣も一緒だ


 田舎にある神社なため顔見知りのご近所さんが多く、マナミサンの事を「若い嫁」といってからかわれたり、美剣が子供たちに大人気だったりと、人付き合いに疲れる場面もあったが、無事に参拝を終えて帰ってきた。


「はい、これ美剣ちゃんの分のおみくじですよ」


「にゃー! にゃんだこれはー! 犬吉いぬきちってなんだにゃー!!」


「落ち着け美剣。それは大吉だいきちだ。大当たりだ」


「にゃー、おせちのゴマがついてたのにゃ」


「ふふっ、ところで先輩。先輩は、神様に何をお願いしたんですか?」


「きまっているだろ。オレたち3人二人と一匹が、怪我せず、健康で、幸せに楽しく過ごせるようにってだよ」


「まあ! 私とおんなじですね!」


「美剣もおんなじなのにゃー!」


「それでは、今年もよろしくな。真奈美、美剣。」


「「はい(なのにゃ)!」」





――――――――――――――――


 明けましておめでとうございます。


 今年もよろしくお願いいたします。


             桐嶋紀

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