第64話 これ絶対臭い奴
「「「くっさ(いのにゃ)ー!!!!」」」
ダンジョンの地下1階、その中の一つの玄室。
そこの扉を軽トラで押し開けたところ、えもいわれぬ臭いがオレたちの臭覚を襲った。
この臭いは、一度嗅いだことのある者なら鼻について記憶にこびりつく臭い。
—―腐乱死体のそれだ。ゴミ捨て場でもない、肥溜めでもない。漬物のヌカが腐ったような、身体にまとわりついてくるような。
「これは……アンデッドか!」
目にも染みる臭いをこらえて敵を注視すると、身体のあちらこちらが腐って溶け落ちているコボルドの集団、アンデッドコボルドが前後衛に分かれて9体ほど。
講習会の時に習った。浅い階層でもアンデッドの類は出てくると。しかし、浅い階層のそれは基になる魔物もそれほど強くないため、討伐は難しくはない。
今回はコボルドのそれだったが、当然のことながら人間をベースにしたゾンビも存在する。その基になった人間はどこから? などと考えていては迷宮の闇にとらわれるので見つけたら何も考えずに倒すようにと、講習会の教官は冗談めかして言っていた。冗談でも怖えーよ!
さて、こいつらにはどう対処しようか。
メインアタッカーの
「いやにゃ、いやにゃー! あんにゃきたないの、わたしの爪で触るのはいやにゃー!!」
そうか、そういえば美剣の武器は自前のツメだったな。確かに、あんな腐った汁ジュクジュクの臭っさい腐肉に生身で触れたくないよな。
と、いうことでオレが前面に。
盾でコボルドゾンビをはね飛ばす!
ぐちゃっ
汁が! 汁が~!
マナミサンも遊撃に。
べちょっ
汁が! 汁が~!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「はあ……全部倒したが……次からはマスク持ってこような……」
フェイスガードは付けているが、においまでは遮断しない。
「はい……
「だな。その鉄の棒、しばらく手放せないな」
「はい、刀買っても、模擬刀も脇に下げておきます。」
「にゃー、美剣も武器欲しいのにゃ! 長いやつ! 硬いやつ!」
「物干しざおあるぞ?」
「その手があったにゃ!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次の玄室も、アンデッドコボルドだった。
今度は物干し竿を振るう美剣も参戦し、3人(匹)仲良く腐汁まみれになった……。物干し竿は、すぐ折れた。当然だ、これは武器じゃない。ちなみに、竿を振るっている美剣は、棒術を扱う中国功夫娘のようにも見えた。竿は壊れたが。
さらに次の玄室もアンデッドコボルドだったため、その日の探索は心が折れ、早めに切り上げた。
ちなみに、美剣が倒した敵からのレアドロップは――出なかった。アンデッドには宝箱もレアドロップは存在しないらしい。なんて嫌な敵なんだ!
最後に、腐汁でまみれた軽トラの運転席を『収納』できれいにしている時に気が付いた。
「
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