第62話 家族の回帰、そして構成
「ダンジョンまんじゅうはやみつきになりましたね。10箱くらい買っちゃいましょう。」
「にゃーにゃーにゃーにゃー(そうなのにゃ、あの薄いながらも存在感のある香ばしい皮、甘さ控えめで口の中でとろけるような、それでいてボリュームたっぷりのアンコ……)」
「そういえば、いつのまにかひと箱無くなってましたけど、先輩、誰かにあげたんですか?」
ぎくっ
「にゃーにゃーにゃー(あ、あの日にゃね。ご主人がどこかに出かけた日だニャ。こんないいおんにゃが一人と一匹もいるのに浮気なのかにゃ?)」
だから長文をしゃべるのはやめろと。
「まああれだ。どうせ話すつもりだったから、車の中で、食べながら話そうか」
結局、センターのレストランはペット禁止だったので(というか、ペットの同伴を想定していない)、マンガ肉はテイクアウトにしてもらった。なお、車内でマンガ肉を食べるのはとっても散らかりそうだったので夕食に回し、昼は食べやすいオーク肉のハンバーガーにした。
ちなみに、買取所のおばちゃんが、オレたちが売却するものの中にスライムのジェルがないことに気付き、「若いっていいわねえ」みたいなニヨニヨした顔を向けてきたのは丁重にスルーしておいた。アレの用途、結構知れ渡ってるんだな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「と、言うわけで、真奈美の家に行ってご両親とお兄さんと兄嫁さんにご挨拶してきた。黙って行ったのは悪いと思っている。」
オレは、先日マナミサンの実家に行ったことを包み隠さず真奈美に伝えた。ご両親やお兄さんの思いもすべて。
「……」
マナミサンは無言で、さっきのオレの話の内容をかみしめているようだ。美剣は食べたからお昼寝だ。
「先輩……」
「怒ったか?」
「いえ、とんでもありません。というより、ごめんなさい。もっと、早く先輩にわたしの家の事、打ち明けるべきでした。ご迷惑おかけしました。ごめんなさい。」
「謝る必要もないし、迷惑でもない。いっただろ? 責任取るって。」
「……はい。ありがとうございます」
「まあ、気が向いたら、一緒に挨拶行こうな。お兄さんのお子さんが生まれたあたりに。そうだ、赤ちゃんの産着とか贈らなきゃな。」
「はい! あと、ダンジョンまんじゅうも。お義姉さんに。」
「そうだな」
「美剣ちゃんも連れて」
「ああ」
「そしてわたしたちの赤ちゃんも」
「それは気が早い」
どうやら、早坂家の仲もどうにかなりそうだと安心して、帰路へと車を走らせるのだった。
夕食のマンガ肉は美味かった。
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