第55話 真奈美の戦技

 コボルドたちは5体と6体の2グループで、計11体。


「このダンジョン、敵の数の増え方おかしくね?」


 入口付近では、狼やスライムが単体で出現していた。少し進むと、コボルドが単体で出現。

 そこからさらに少し進んだところで狼さんやスライムさんがいきなり団体様で出現した。

 そして、ここではコボルドくんたちの団体様である。


「できれば、一体ずつ増えるとか……順を追って欲しい所ですね……」


「にゃー、美剣みけなら楽勝なのニャ」


 いくらオレとマナミサンがレベルアップしたからと言って、人型モンスターコボルドの団体様は手古摺るのではないだろうか。まあ、美剣なら楽勝だろうが。


「わたしが行くかニャ?」


「いや、オレたちも経験を積みたい。美剣は遊撃で」


「先輩、私に行かせてください」


 マナミサンがなにやら吶喊希望。まだ引きずっているのかな?


「真奈美、昨日も言ったがお前はお前だ。焦ることはないんだぞ」


「ありがとうございます、先輩。でも大丈夫です。試してみたいことがあるんです。」

 

 マナミサンは落ち着いている。どうやら大丈夫のようだ。


「わかった。危なくなったらすぐ『挑発プロヴォケーション』かけるからな。そしたら遊撃に回れよ」


「はい!」


 マナミサンが敵の群れに突っ込んでいく。


 足を止めて先頭のコボルドを打ち据える――かと思われたそのとき、


「はああああああああ――っ!」


 なんと、足を止めるどころがコボルドたちの間を流れるように移動していき、すれ違うごとに一閃――、または相手の打撃に一瞬足を止め、敵の攻撃をいなしてから返す一閃。前衛、後衛問わずにコボルドたちの間を駆け抜け魔物たちの裏に出る。

 ひととおりコボルドたちにダメージを与えるが、まだコボルドたちは絶命しない。

 今度は魔物たちの後ろからこちらに向かって駆けてきて、先ほどと同じようにすれ違いざま、コボルドたちを打ち据える。

 模擬刀鉄の棒の攻撃を2撃、3撃喰らったコボルドたちは順に光の粒子になって消えていき、結局、すべてのコボルドをマナミサン一人で倒してしまった。


「にゃー! まにゃみすごいニャー! まるで桃〇郎サムライにゃー!」


 最近時代劇を見ている美剣が叫ぶ。うむ、全く同感だ。ただ、オレの頭に浮かんだイメージは美剣とは違って暴れ〇坊将軍だったが。


「真奈美、今の技は?」


「はい、レベルが上がった時に漠然としたイメージはあったんですけど、今までできるイメージがわかなかったんです。でも、コボルドの群れならいける気がして」




 マナミサンのこの戦技は―― 『殺陣たて』。


 複数の人型モンスターに発動する、対多数用の刀の戦技わざだった。




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