第54話 ダンジョンは取り込まない
「あー、やっちまったなあ」
スライムのレアドロを使ってのあれやこれやは前回で懲りたはずなのだが、またやってしまった。
またバケツを持って階段を何往復もしなければならないのか……と憂鬱になっていた時、ある
「収納!」
スライムのぬるぬるだけを収納してみると、見事成功! 一瞬で軽トラがきれいになった!
「取り出し!」
ドロップ時に入っていたプラスチックのような容器の中に取り出してみる。
「おお、ほぼ元通りだな」
「これなら再利用できますね?」
「しません。」
とは言ったものの、使用済みのものを売却するわけにはいかないし。モラルでも衛生上の観点からも羞恥心からもそれは不可能だ。
「そういえば、ダンジョン産のものを廃棄するってどうすればいいんだろうな?」
「ダンジョン、
物語の中に出てくるダンジョンなどは、その中にあるモノ、たとえば無機物とか魔物や冒険者の死体なんかを養分とかにして取り込んでしまう描写がよくあるのだが、現実世界のそれはどうやら違うようだ。
以前、軽トラの下に入り込んで放置されていた
最初は、ドロップ品以外はダンジョンに放置すれば飲み込まれるものだと思っていた。だがそれは世間に広まる噂、所謂デマや都市伝説といった類のものであったことが、講習会の講義の中で明らかになったのだ。
巷では、ダンジョンに遺体を取り込ませての完全犯罪を解決する名探偵の玄孫の物語が流行っていたのも、そのデマが広まった原因の一つなのだろう。
「まあ、ドロップ品だからどのみちダンジョンに食わせるという選択肢は最初から無いわけなんだが……」
「下水に流しますか?」
「いや、それはアウトだろう」
てんぷら油じゃないんだから。
結局、軽トラの『収納』の中にしまい込んでおいた。問題の先送りともいう。
まあともかく、軽トラは怒涛の洗車大会を行うことなくきれいにな状態に戻ったのである。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――ダンジョンの玄室、
軽トラが
「この辺から敵が多くなるからな。油断すんなよ」
「「はい(なのにゃ)」」
玄室の扉を軽トラで押し開ける。まあ、油断するなと言っても軽トラの中に居れば結界防御で安心なので、攻撃に移るとき以外は油断していてもなんとかなるのだが。
「おお、コボルドの団体さんは初めてだな。美剣、飛び出すなよ」
初めての、人型モンスターの団体との戦いが始まった。
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