第51話 魔石
探索者専用サイトのニュース記事に、自衛隊の第1部隊がダンジョン第10層の攻略に成功したという記事が載っていた。攻略されたダンジョンは、国が最も攻略に力を入れている釧路ダンジョンとのこと。
日本国内で報告されている最深攻略記録の更新である。
ちなみに世界全体ではアメリ〇が21階層、〇シアが20階層、中〇が22階層、北の某国が18階層で、隣のあの国は17階層という発表になっている。
この発表に別にケチをつける気はないが、国の力の顕示とか敵性国家への牽制とか見栄とかいろいろあるんだろうなという気はする。
日本の攻略記録はそのような国に比べてはるかに遅いように感じるのだが、名目上は軍隊を持たない専守防衛というお国柄のせいだろうか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
世界の各国では魔石を次世代の動力として使用する研究が進んでいる。
今は魔石から特殊な方法で原油を精製する研究が進められており、その研究は一定の成果を上げてはいるが、コスト面でなかなか市井の者まで恩恵が降りてきてはいない現状である。
また、魔石をそのまま原子力を超えるクリーンな超高出力エネルギーとして置換する研究も進められており、各国の研究機関がしのぎを削っている。
釧路にある研究機関もエネルギー関連のものが多く、日本としても最重要国家戦略に位置付けられている。
噂では、20階層以降で魔石をそのまま核融合炉の能力として置換できる魔道具がドロップしたという話で、軍事先進諸国ではその保有をほのめかしてもいるが、現時点では真偽のほどは明確にはされていない。そのうち、ビッグニュースとして全世界に発表されるのではとの内容もセットになっている噂でもある。
このような事由から、魔石の確保は国としても最重要課題である。そのため、世界的な相場として高額な買取価格が設定されているのだが、この国では魔石売却の税金が異様に高い。
この経緯としては、人命第一主義の市民団体と野党らから、
『魔石の高額な買取価格は国民の安易なダンジョン攻略を誘発し、人命を軽視する風潮を助長するとともに既存の職業の軽視につながり、結果、社会インフラ弱体化及び国民の減少により国力を低下させることにつながる』
との主張がなされ、有識者団体らからの支持も受けたことに端を発する。
しかしながら、全世界共通の「魔石」というものの価格を一国のみが下げることは相場の不均衡を招くとともに魔石の密輸による国外流出を助長する事にもなることから、税金を加増し、探索者が手にする魔石の売却益を抑えることで安易に攻略に走らないようにするとともに、徴収した税金で研究や自衛隊への探索力強化を行い社会インフラをはじめとする国全体、社会全体へ還元(現金で国民に還元すべきという議論はいまだ続いてはいるが)するものという方向性が示されたことにより、ダンジョン産のあらゆるものに高額な税金が設定されたのである。
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