第50話 ガソリンの言い訳

 予想外の出来事が立て続けに起き、パニックになったオレはとりあえず軽トラをダンジョン内に戻した。残念だが、給油はガソリン缶を買って行おう。


 マナミサンも、美剣みけが地上でも人間の姿だったことに呆然としている。


「にゃー、夜もご主人といいこと出来ると思ったのにニャ」


 美剣だけが通常営業といった感じだ。


 ちなみに、軽トラから降りて地上に戻った美剣は普通に猫の姿に戻っていた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 その翌日、一晩寝て少し落ち着きを取り戻したオレは、なぜかバイクショップで除雪機の契約をしている。なぜに突然除雪機? と疑問があると思うが、それには理由がある。


 軽トラの給油につき、ガソリンの20ℓ携行缶をいつものホームセンターで買ったまではよかった。だが、いざガソリンスタンドにガソリンを買いに行こうとしたとき、ある省令きまりの存在を思い出した。

 『ガソリンを販売するため容器に詰め替えるときは、顧客の本人確認、使用目的の確認及び販売記録の作成を行う事』

 

 なじみのスタンドのおっちゃんなので、適当に使途をごまかして買おうかと思っていたのだが、どうやら事はそう簡単ではなかったようで、ガソリンを買う正当な理由が必要になったのだ。

 しかも、記録も作成されるというのでは適当なごまかしなど、この秘密美剣と軽トラを抱えた状態では後ろめたいことなど極力避けたい。

 なので、正当な理由として、「除雪機に使う」と言って買う事とし、そのために本当に除雪機を買いに来たというわけである。まあ、あれば便利だしな。50万円は痛いが。


 冬が近い今の季節ならば、ガソリンの購入に除雪機の試運転を行うという言い訳が通るだろうが、夏などになるとその言い訳は通用しない。他になにかいい理由を探しておかなければならない。耕運機かな? 裏の畑をマナミサンと耕すのも悪くはないか。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「はあ、出費ばかりがかさんでいる気がする」


「今週も魔石売りに行きましょうか?」


美剣みけもついていくのにゃ」


 美剣は、ネコカゴに入ってのおでかけが気に入ったようである。


「ああ、レベルも上がったことだし、今度は多めに売っても怪しまれないだろう」


「スライムのレアドロップも結構高く売れるらしいですね。売りませんけど。」


「売るからね!」


「そういえば、たしか専用サイトでも売れるんでしたよね?」


「売れることは売れるが、魔石とかドロップ品専用の箱を取り寄せたりとか、査定の時間がかかるとか、振り込みが遅いとかの面倒もあるしな。それに、ドライブがてらセンター言って売店見た方が楽しいだろ。」


「売店たのしいのにゃ!」


 そんな他愛もない会話をしつつ、話に出た探索者専用サイトをのぞいてみた。

 そこには売買のフォームや装備品のネットショップのほか、攻略情報、国有私有ダンジョンの探索者募集やパーティー仲間募集掲示板、ニュースサイトや雑談掲示板など有用な情報が沢山詰まっているのだが、ここのところのあれやこれやでゆっくり見ている余裕がなかったのである。


「なになに? 自衛隊第一部隊が10階層攻略だとさ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る