第49話 地上の美剣、そして軽トラ

 実は両開きだったダンジョンの出入り口の扉を全開にし、軽トラが通れるようになった。

 これにより、今までは無理だと思われていた、ダンジョン内の軽トラを外に出すことに成功した、のだが、


「ダンジョンの外でも、美剣みけが人の姿のままだと!」


 軽トラの荷台に乗っていた美剣は、外でも人間の姿のままだった。


「美剣……ちゃん? 大丈夫?」


「なにがにゃ?」


 どうやら美剣は自分に起きた異変に気付いていないらしい。


 とにかく、一旦隠れなければ!


 オレは大慌てで軽トラをバックさせ、車庫内ダンジョンに続く階段の中まで移動させる。

 なんせ、入口の扉を確認するためだけに来たのだ。美剣の着替えなど持ってくるはずもなく、つまり、今の美剣は全裸の人間の美少女なのだ。


「ご近所さんに見られてないよな……」

 

 それにしてもおかしい。美剣は、通常ならばダンジョン出入り口の扉を境に猫に戻るはずなのだ。原因は……やはり軽トラしか考えられない……軽トラ?


 思考の途中で何かが引っ掛かった。今の状況は、美剣とマナミサンを荷台に乗せたまま軽トラで地上に出た……軽トラが地上に出た……っ!


 そこで、オレは違和感の正体に気付いた。


――【異質化】したものは、通常、ダンジョンから外に持ち出すことはできない。

 ただし、元の状態と見た目がほとんど変わらないような【異質化】をしたものは、持ち出すことはできるが、その恩恵、能力は地上にいる間は失われる。

 

 今、地上に出た軽トラには、何も変化が起きていない。変化が起きていないのがおかしい。

 なぜならば、軽トラの荷台は「ストレージ」化しており、その中には魔石などのドロップ品を多数収めていたのだ。本来なら、地上に出た瞬間にその中身をぶちまけてしまうはずなのだ。


「ということは、ほぼ無限に、重量無視で積載できる軽トラで地上を走り回ることが出来る……」


 なんと、ラノベによくあるアイテムボックス、青いネコロボの腹のポケットが、軽トラという条件付きではあるが地上で現実化してしまった。


 確かに便利だ。いや、便利を通り越して反則だ。もしこれが世の中に公になったなら、恐ろしいことになる。間違っても、反社会勢力や敵性国家に知られるわけにはいかない。いや、そもそも他人に知られてはいけない!

 

 絶対防御もおそらく有効だろう。この、間違いなく世界の軍事均衡パワーバランスを崩す存在にめまいがしてきた。 


 それに、地上でも人間の姿のままの美剣。


 いったい、何が起きているのだ。


「おれはただ……軽トラを給油しに行きたかっただけなんだ……」

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