第46話 団体戦

 軽トラに乗ってダンジョンを進む。この先はまだ未踏の玄室だ。


「ご主人もまにゃみもラベルが上がって楽勝なのニャ。そろそろ美剣みけも戦っていいかにゃ?」


「ああ、ラスアタラストアタック入れなくても戦闘に参加してれば経験値は入るみたいだしな。これからは、オレが1トップ、後ろの左右に二人が遊撃というフォーメーションでいってみよう」


「わかりました」


「了解ニャ」


 美剣がレベルをラベルと言ったことはスルーしといてやろう。





 ―なにものかにであった!―



 突然軽トラの後方に敵が現れた! バックアタックだ! しかも複数!


「つかまってろ!」


 軽トラをバックさせ、灰色狼の2体を巻き込みながら後退する。

 そのまま魔物たちをやりすごすことで、逆に魔物の背後に向かって軽トラが正対している形になる。残りの狼は5体、スライムが3体。


「まなみ! 美剣! 出ろ! 美剣は狼、まなみはスライムに当たれ!」


「「了解(にゃ)!」」


 美剣は瞬殺で狼2匹の首を落とす。マナミサンはスライムの1匹に打撃を加え、核を潰して撃破する。


 有名なダンジョンRPGならば、味方だけでなく敵にも前衛後衛が適用され、後衛の魔物は直接物理攻撃ができない仕様になっているが(一部武器種や職業等によって例外あり)、ここは現実。比較的体躯の小さい狼やスライムなどは前衛後衛関係なくただスペースさえあればこちらに直接攻撃を加えてくる。


「よし! 少し下がれ!」


 少し遅れて運転席から飛び出したオレは、突出した二人を下げ、陣形を落ち着かせる。


挑発!プロヴォケーション


 先刻のレベルアップで覚えた盾のスキルをさっそく使ってみる。

 残りの魔物たちが一斉にオレの方にターゲットを変えて向かってくるが、今のオレにとっては脅威に感じない。


 オレの盾にぶち当たって撥ね飛ばされた狼とスライムを、美剣とマナミサンが処理していく。おお。遭遇戦で宝箱は出てこないが、やっぱり美剣が倒すとレアドロップ落とすんだな。魔石が9個、毛皮が4枚。もう一つは……なんだこれ?


「スライムのレアドロップでしょうか?」


「……うん、たぶん」


「これってなんなのかにゃ?」


 目の前にあるのは、なぜか透明のプラスチックのような容器に入った粘り気のある液体。透明のジェルと言えばいいのだろうか。


 スライムが落とすそれと言えば、使用方法はおのずと理解できる。まあ、用途はそれだけではなく、軍では兵器等の潤滑油や、外用薬の触媒、ダイバーの防寒対策など、ワセリンや機械油のように加工されたりしているようだが、市井の民からすれば、使用目的はアレひとつだ。


「こんどから、スライムが出たら美剣ちゃんが倒してくださいね!」


「美剣が倒してもいいが、売るからな! 夜に使ったりしないからな!」





 その帰り、軽トラの荷台で試しに味方に『挑発』を使ってみたら、美剣とマナミサンが『挑発』されてしまい、スライムのレアドロップを使っての団体戦に突入したのだった……。

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