第45話 レベルアップ
――ダンジョンの中。
「
「わたしはイヌじゃないのにゃ! その掛け声やめるにゃ!」
「ネコってどうやって落ち着かせればいいんだ?」
「音のするおもちゃとかがいいってネットで見ました!」
「またホームセンターに行かなきゃだな」
「にゃー! そんなものいらないのにゃー! 美剣は落ち着いたあだるてぃなネコなのにゃー!」
「興奮してんじゃねえか」
そんなこんなで、オレが盾で受け止めマナミサンが攻撃を入れる戦法でコボルドを撃破する。美剣は
コボルドは狼やスライムよりは強く、人型というのがまた戦いずらい。持っていたこん棒のような武器を投げ捨ててオレの盾につかみかかってきたときは焦ったが、横からマナミサンがいい打撃を入れてくれて助かった。
「お? これがレベルアップってやつか?」
「はい、私も感じました! なんか体がむずがゆいです!」
「むー、わたしは感じないニャ」
美剣はすでに数回レベルアップしてるからな。今回はオレとマナミサンだけがレベルアップしたようだ。
「さて、どれくらい強くなっているのか試してみないとだな」
「そうですね!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「なん……だと……!」
「楽勝でしたね」
レベルアップした後、腕試しで灰色狼と戦った。
なんと、オレが盾ではじき返しただけで瀕死になり、マナミサンの追撃1発で昇天あそばれた。
「たったひとつレベルアップしただけでこんなに違うのか……」
「じゃあ、最初から狼瞬殺出来て、さらに4つくらい上げてる美剣ちゃんはとんでもない強さってことですね」
オレが初めてダンジョンに入った時に殺されかけた狼がまるで小物のように感じる。
しかし、これで得心がいった。これまでは、魔物を倒す労力と危険度に比べて実入りが少なすぎると思っていたのだ。
最弱と思われる狼やスライムでも死の危険を感じながら倒し、魔石の売却益が約2千円。大人一人が生計を立てるのに大雑把に一日一万円必要として、一日に1人で5体、6人パーティーならば30体倒さねばおまんまの食い上げになってしまう。
それに、たいていの探索者は国有であれ私有であれ雇われ探索者だ。仮に収穫の5割を取り分とするとさらにその2倍の数の魔物の討伐が必要になる。
さっき倒したコボルドなどは魔石の格が上がって売却益が一個4千円くらいになると言うし、【資産期待値】がDとかEでも、魔物は強くはなるが一個1万円以上の売却益の魔石がそれなりに手に入るという話だ。
これならば、魔物に出会う確率さえ悪くなければ十分クリアできる数字だ。
レベルが上がる前ならば、それは難しい数字だと感じていたが、いざレベルが上がってみるとそれほどの苦労にもならないと感じる。
「最初のレベルアップまで生き残れるかが、探索者としてやっていけるかの境界線なんでしょうね」
「ああ、切実にそう思う。これなら、普通に仕事をしているよりも稼げるようになるのは理解できるからな。危険が伴うとはいえ探索者が人気な訳だ。」
こうして、初めてのレベルアップを経て、更に探索が捗っていくようになったのである。
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