第43話 税金
これだけだと何のことだかわからないので補足すると、ダンジョン内で美剣が魔物を倒したときのレアドロップ率が異常に高く、その原因が何かということだ。
「わたし、こんなにデブネコじゃないのにゃ」
「まあまあ、縁起がいいのは確かなんですから」
仮に美剣のステータスを見ることが出来るのなら、おそらくは『招き猫の恩恵』とか『千客万来』とかいうようなスキルなり属性なりがついていることだろう。
なぜそんな特性が生えたのかはさっぱりわからなかったのだが、後日、軽トラのダッシュボードの中から、某宝くじセンターからもらった招き猫のストラップ(本体は取り込まれ、紐の部分だけ)が発見された。
「よし、美剣を拝んでおこう」
「なんか嫌なのニャ」
「今日から神棚に寝るか?」
「バチが当たりそうなのにゃ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その翌日、オレたちは晴田市の探索者支援センターに来ていた。
目的は、魔石の一部を売って、現金収入を得る為。
なぜ、突然現金が必要になったのかと言えば、昨日ポストに届いていた「納税通知書」のせいだ。
「年間、査定額の5割なんて高すぎるわい!」
我が家にできたダンジョンの売却査定額は80万円で確定した。それに伴い、『ダンジョン税』の額も確定したのだ。
私有地に出現したダンジョンを国に売却せずに自前の物とする場合、その探索は自由になる代わりに税金が発生する。その額は、年額で査定額の5割。つまり、我が家の場合は40万円を毎年納付する必要がある。
「これって、査定額が一億とかなら絶対に税金払えないですよね」
全くその通りだ。宝くじの特賞よりも確率が低く、高額の査定が付くダンジョン。日本の過去最高は約10億円で、北海道釧路のあたりで民家の畑に出現したらしい。
なんでも、そのダンジョンはフィールド型の1フロア10㎞四方以上にもなる広大なエリアが最低でも地下20層以上にわたって広がっているらしい。【資産期待値】はAランクで【脅威度】もAランク。しかし【成長可能性】は最低値のGランクだったか。
そこの地主さんはもろ手を挙げて国に売却したらしい。当然だ。毎年5億円の税金なんて払えるわけがない。
そして、マスコミに記事が流れてご近所さんや親戚一同からのやっかみを受けてしまい、人知れず一家で引っ越したとか。
で、今現在、日本最大と言われるその『国営釧路ダンジョン』の入口には自衛隊の攻略拠点と民間資本の研究機関が築かれ、連日攻略やら研究やら、はたまた観光やらで一つの街を形成しそうな勢いなのだとか。
「さて、それはともかく、オレらは魔石を売るとしようか」
支援センター内の売店と併設された買取センターに魔石と狼の毛皮を持ち込む。あまり多く持ちこんでいらぬ疑いを抱かれても困るので、今回は魔石100個、毛皮12枚と、頑張れば達成できるような数にとどめておいた。
ポーション類は売らない。どう考えても自分たちで使った方がコスパがいい。
「それでは、魔石が100個で総額は102万3千円、税金を抜きまして、20万2千円の買い取り額になります。毛皮の方ですが、状態のいい物が多いので一律2万円、24万円の査定で、4万8千円のお渡しになります」
分かってはいたが、ダンジョン成果物の販売税は高いな。合計約23万円。まあこんなもんか。ダンジョン税の40万には届かないが、この前装備を買ったばかりなので、残った貯金だけでは心もとない。来週にでも追加で売りに来るとしよう。
ちなみに、オレが魔石を売っている間、マナミサンとネコカゴに入ってついてきた美剣は売店のお土産コーナーを一生懸命に見ていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます