第40話 美剣の能力

 なんと、美剣みけは宝箱の罠の種類がなんとなくわかるらしい。

 

 しかも、狼と戦えば首を一発で落とすような戦い方をする。


 この両者の特徴を兼ね備えた職業には覚えがある。


 それは―――




「美剣、お前は『忍者』になったのかもしれない」


「「おおー」」


水遁すいとんの術を使うのは温泉にかぎらせてくれにゃ」


「その偏った忍者知識はどこから得たんだ?」


「ご主人たちがいにゃい時にプラ〇ムビデオ見てたにゃ」 


「ハット〇くん……なのかしら?」


「安心しろ、影千〇になれとは言わない。今度アタックした時、宝箱を開けるのに挑戦してみてくれ。」


「わかったにゃ。にゃんとなくだけど、できる気がするニャ」




 思いもかけず、宝箱の罠や鍵の対策が出来てしまった。


 どうやら、美剣は『忍者』の職業に適性があるようだ。


 あまり詳しくない人のために説明すると、線画のダンジョンに潜って探索してボスを倒す古き良き時代の某ゲームの中の職業であり、その中で忍者は所謂上級職に位置づけられる。


 どんなに強い敵でもHPを一撃で刈り取る「クリティカルヒット」を繰り出し、「盗賊」のように宝箱の罠を外す技能も身に着ける。他には、レベルが上がれば生身の時のACアーマークラスという防御力が上がっていき、その身軽さで敵の攻撃を避け、回避の妨げになる防具を着けない状態の方が防御に秀でるといったキャラに育っていくのだ。


「にゃら、わたしはれべるが上がれば全裸で戦うのかニャ?」


「くっ……ここでも猫の全裸デフォ設定がでてくるとは……」


「私も負けずに脱ぎますよ?」


「そういう話じゃない。頼むから防御力は上げてくれ」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ということで。準備を整えた翌日、再度ダンジョンに潜っている。



「まさか本当に物干しざおを買ってくるとは思わなかったぞ?」


「いくら美剣ちゃんが宝箱を開けられるかもしれないとは言っても、やっぱり安全策は必要だと思いまして」


「まなみの性格は豪快なのか慎重なのか分からなくなってきた」


「あら? いい女は昼と夜とで姿を変えるんですよ。せ・ん・ぱ・い」


「さて、今日は昨日よりも少し奥まで行ってみるぞ」


「ご主人のスルースキルが上がってきてるニャ」



 物干しざおを荷台に積んで、軽トラはダンジョンの通路を進んでいく。


 昨日同様、灰色狼とスライムは苦戦することなく討伐に成功する。



「宝箱だな」


「にゃ」


「美剣、いけそうか?」


「たぶん大丈夫ニャ」


 

 美剣はすたすたと宝箱に近寄り、しゃがみ込むといきなり宝箱を開けた!


「「!!!!」」


「罠はかかっていなかったニャ」


「心臓に悪いからそうならそうと一言言ってくれ」


「そうですよ、美剣ちゃん」


「いいか、美剣。宝箱を前にしたらな、『開ける』じゃなくて、『調べる』をしてから『罠を外す』を選ぶんだ。決して、いきなり『開ける』を選択してはいけないんだぞ?」


「何の話か分からないけど、次からはもっと慎重にやるにゃ」


「そうしてくれ(ください)。」



 心臓に悪い場面もあるが、今日の探索もとりあえずは順調なようだ。


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