第38話 宝箱

「おお、宝箱だ!」


 ダンジョンアタックを開始して、通路の先の最初の玄室を攻略。因縁の相手である灰色狼と相対し、通常のあたりまえの闘いかたで初めての勝利!


 そうして、目の前には初の宝箱が出現した。


「さて、これをどうするかだが……」


 宝箱には、罠がかかっていることが多い。魔物には罠を仕掛けるような知能はないだとか、ならば誰が仕掛けたとか、そんなことはダンジョン研究家たちに任せておくとして、さしあたっては今目の前にある宝箱をどうするかということだ。


 



  ドゴーン。


 軽トラで轢いてみた。


 結果、罠はなかったようで、無残にも倒れて口を開いた宝箱が転がっている。


「魔石と毛皮……ですね」


 うん。中身を無傷で手に入れられたのはいいが、やはりなんか違う。

  

 現状、オレたち3人の中に宝箱を開けられるスキルを持った者はいない。軽トラを使うことで確かに危険は避けられるのだろうが、今後は鍵のかかった宝箱も増えてくるだろう。このような開け方をしていたのでは、鍵開けのスキルが誰かに生えてくることはないであろう。


「やっぱり、自力で何とかする方法でやっていこう」


「はい」


「はいにゃ」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


――次の玄室、


 扉の向こうには、俗にいうスライムが待ち構えていた。


 飛び掛かってくる触手のような体を盾で払いのけつつ、そのまま盾でスライムの上にのしかかる。


  プチッ


 どうやら、核のようなものを潰したらしい。斬撃や打撃といった点や線の攻撃はなかなか通じづらい感じだが、こうして面での攻撃はとてもよく効いた。


 そして、本日2回目の宝箱だ。


 今回は、オレが盾に身を隠しながら、マナミサンの模擬刀を借りて突っついてみた。

 箱と蓋の間に模擬刀の先を差し込み、上に持ち上げると針のようなものが飛び出てきた。毒針という奴だろう。


「ふう、手を突っ込んでたら危なかったな」


 念のため冒険者支援センターから解毒ポーションを数本買ってきてはいるが、やはり毒などにはかかりたくはない。

 それに、解毒ポーションもお安くはない。何と一本3万円! 宝箱の罠解除に仮に3万円かけて、それに見合ったドロップが得られるかと言えば答えは否である。

 

 参考までに、灰色狼のドロップする魔石について。

 

 魔石は高額で買取されるので、小さなものでも約1万円の買取価格が付くのだが、その売買でかかる税金が8割と決められていて、実入りは約2千円にしかならないという実情があるのだ。

 美剣が大量の魔石を確保してくれたので、一個2千円の約500個として、現状で100万円分くらいの収入は見込めるのだが、それは美剣が異常に強いからなのであって、オレたち凡人が命を懸けて戦って一回2千円というのは微妙な気がする。まあ、ここはダンジョンの入口の最上層なのだから、今後もっと強い魔物を狩ることが出来れば収入はうなぎのぼりとなることを期待しよう。


 さて、探索を続けようか。

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