第37話 初勝利
軽トラを前進させ、最初の玄室から通路に繋がる扉を押し開ける。
この先、どれほどの迷宮が広がっているのだろう。どれだけの強敵が待ち構えているのだろう。
そんな不安と緊張、そして、少なくない高揚感が背筋を走る。
もう、不覚は取らない!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
扉の奥に広がるのは、幅が6メートルほどの幅広い通路。6人パーティーなら、前衛3人、後衛3人の横並びで2列で戦うのに適した広さだ。
通常は、斥候に相当する技能の持ち主が先頭を歩いて罠や魔物の接近を感知し、その後ろに素早い軽戦士、
だが、オレたちは、
ブオンブオ――――ン
軽トラに乗って突き進む。
―なにものかにであった!―
「あら、先輩、スライムですよ?」
「よし、殲滅だ!」
ぐちゃッ
スライムを
「これでもオレらに経験値入るのかな?」
「楽ですね。私何にもしてませんよ。」
「なんか、他の作品で似たような描写を見た気がするニャ」
はっはっは、美剣よ。メタな発言は控えるのだ。
「それにしても、この調子じゃ全くレベルが上がる気がしないな。次からは降りて戦おう。」
「了解です」
「了解にゃ」
そうして、軽トラを降りて歩みを進める。
「……狼だな。」
「狼ですね。」
「狼だニャ。」
オレが死にかけた相手。だが、資格取得時のVR模擬戦でこいつの動きは予習済みだ。今こそ、雪辱の時!
シュパッ
「楽勝にゃ」
「……えーと、
「ぶー、わかったにゃ」
あーもう、楽なのはいいのだが、こんなんでいいのか? もっと、血沸き肉躍る戦いがここにあるんじゃないのか?
そんなこんなで、通路の奥にある扉を見つけた。
「たぶん、この中には確実に魔物がいる。宝箱もドロップするかもしれないから気合い入れていこう」
「「おー!(にゃー!)」」
念のため、軽トラはすぐ後ろに移動させてある。
オレは両手で扉を押し開ける!
―なにものかにであった!―
狼だ! 今度こそリベンジだ!
灰色狼は大きく飛び上がって噛みついてきた!
オレは大盾で狼の攻撃を受け止める。
マナミサンが側面に回り込み、鉄の棒で狼の横面を打ち付ける! 2回あたった!
ひるんだすきに、オレは盾の下端に体重を込めて狼の脇腹に突き下げる! 1回あたった!
「ギャイィィィィィンンンンン!」
どうやら効いているようだ。
美剣を見学に回すと、現状はオレもマナミサンも打撃を加える攻撃方法しかないのでまともに戦えるか心配だったのだが、大丈夫なようだな。
それに、絆を交わしたマナミサンがどこにいて何をしようとしているのかが手に取るようにわかる。美剣も同様だ。こんなにも効果が実感できるとは、コトを為して良かったと思える。
動きの鈍くなった狼に対し、マナミサンがとどめの一撃を加える! 2回あたった!
無事、灰色狼は光の粒子になって四散した。
よし! 実質の初勝利だ!!
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