第35話 家族のカタチ
「もしもし、姉さん? オレオレ、佳樹。あ、うん。それがさ、仕事辞めたんだ。うん。大丈夫。実はさ、家の車庫あるじゃん? あそこ、ダンジョンになっちゃってね、うん。探索者やることにしたから。うん。そういう事。正月? コロナ大丈夫だったら帰ってきなよ、うん。あ、そういえば、同居人増えた。んーと、たぶんそうなるのかな。式とか決まったらまた連絡する。じゃあまた、はい。」
とりあえず、唯一の肉親である姉に近況を報告する。姉は仙台市に嫁いでいて、一女一男を設け、旦那とも円満に暮らしている。電話の向こう側で、ダンジョンの話のあたりで子供らが騒いでいたのが聞こえた。あいつらも元気らしい。
オレが仕事を辞めたことを話しても、深く追求してくるわけでもない態度がありがたい。
「先輩って、お姉さんと仲いいんですね。うらやましいです。」
「まなみも兄さんいるんじゃなかったっけ?」
「わたしの家は、ほぼ家族断絶ですから……兄なんて、数年話もしていません」
「そうなのか? じゃあ、ご両親にご挨拶に行かないとって思ってたんだけど、どうしよっか?」
「!!!!!!!!!先輩! 私をもらってくれるんですか?!!!!」
「
「先輩! 大好きです!!!!!」
「ご主人! わたしは? わたしももらってくれるのかにゃ!?」
「ああ、
「にゃーー!! わたしも武田家の嫁にゃ~!」
「役所に猫の戸籍はないから、今度保健所にそう登録しておくか」
「それはなんかいやにゃのだ。それに猫に登録義務はないのにゃ。」
「冗談だ」
ということで、オレたちのダンジョンでの生存率を上げるため、実際はマナミサンと美剣の剣幕に押されて――
ダンジョン内の軽トラの荷台の上で、最初は美剣、次いでマナミサンと絆を交わした。交わしてしまった。
まあ、感想としては快楽マシマシは情報通りといったところだろうか。それぞれがコトの後では放心状態でしばらく起き上がれず、とてもではないがそれからダンジョンに挑むなんてありえない状況だった。まあ、ダンジョンアタックは無理でも2回戦や3回戦は絶好調だったのだが。
今回が初めてだったマナミサンや美剣は、いきなりこんなに刺激を受けて今後が心配されたが、相手が変わるという事はなければ大丈夫だろう。変わる事なんてないよな?
これまで、こいつらに対して煮え切らない態度を取ってきてしまったわけだが、オレとて朴念仁ではない。こうなった以上、きちんとけじめは付けなければ。
というか、生存率を上げておかないとダンジョンアタックもままならないし、そうなれば生活の糧も得られないしということで、これはなかば必然の流れなのだ。うん。
「じゃあ、明日からダンジョンアタック開始な。」
「はい! われらが武田家の家業開始ですね!」
「美剣はたくさん頑張るのにゃ!」
「よし。じゃあ、今日は早めに寝ようか」
「せ・ん・ぱ・い? 家の中では私が専用ですよね?」
「美剣は見てるのにゃ」
「早く寝なさい」
せめて、家の中でのコトの主導権だけは渡さないようにしなければ!
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