第34話 装備品

 国家資格講習を終え、無事に国家試験にも合格し、オレとマナミサンは晴れて探索者の国家資格を取得した。

 

 試験を終え帰ってくると、マナミサンは即、美剣みけを連れて自室にこもり、なにやらオハナシをしているようだ。話の内容は、まあ、あのことだろう。

 

 オレとしては、美剣に言い寄られ、押しかけ女房のようにマナミサンに好意を寄せられることに悪い感情は抱いてはいない。むしろその積極性と健気さに絆されてきている自覚はあるので、生存率を上げるための行為を行う事はやぶさかではない。まあ、ダンジョンの中で致すことになるので特殊な性癖が生えないように気を付けなくてはならないが。


 ところで、生存率と言えば、それを高めるためにいくつかの装備を手に入れてきた。

 魔石やドロップ品などの売買や装備品の購入などは、国家資格取得者とダンジョン所持者がログインできる特設サイト内にてネット上で行えるのだが、都道府県の県庁所在地にある探索者支援センターには売店も設けられており、装備品などを直接目で見て手で触れて購入することが可能なのだ。

 まあ、とはいってもオレが住んでる晴田県は田舎なのでそこまでの品ぞろえはなかったのだが、それでも実際に手に取ってみることのできる装備品、特に銃器などはネットでは味わえない迫力があった。


 オレが購入したのは、VR模擬戦でも使用した機動隊払い下げのジュラルミンの大盾だ。透明な軽くて取り回しのよいポリカーボネート製のもあったのだが、敵に打撃を加える為の重量を重視して旧式のジュラルミン製にした。まあ、重いことは確かなのだが機動隊のように持って延々と走るわけではないので大丈夫だろう。

 マナミサンは、本当は日本刀が欲しかったのだが、その価格の高さに断念。安いもので80万円ほど、高いものは青天井だ。ちなみにオレの盾の方は払い下げ品でもあり約10万円でゲットできた。

 

 マナミサンは社会人1年目でアパート暮らしをしていたため貯金というものがほとんどない。オレはこれまで独身で車にも金をかけずにいた人なのでそれなりの貯金があり、貸そうとしたのだがマナミサンに断られた。なんでも、そこまで迷惑をかけるわけにはいかないそうだ。マナミサンが迷惑って概念を持っていたことに驚きを感じたのは内緒だ。

 

 で、何を買ったかというと、日本刀と同じ重さの素振り用模擬刀、値段は2万円也。まあ、柄の付いた鉄の棒だ。鉄芯入りの木刀よりは実戦の打撃に向いているだろうという事で、とりあえずはこれで鍛錬を積みながら地道に狼を撲殺して金策をしていこう。


 防具の方は、合成プラスチック製のフルアーマースーツが上下で10万。爆弾処理班が使用しているようなフェイスシールドヘルメットが5万。軍用ブーツ3万、軍用の防刃グローブ1万円といったところ。あとは刀の鞘や、オレの補助武器である手斧を腰にぶら下げる為の帯革を1万円で購入。

マナミサンは自分で払い、美剣の分はオレが出した。

 美剣の防具を買う時に、小柄な女性用サイズを買ったこともあって店員からいぶかしがられたが、ダンジョンを見学したいと言い張る姪っ子の物だと説明してその場を乗り切った。

 

 姪と言えば、あいつら姉とか甥とか姪にダンジョンの事、まだ話してなかったな……

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