第30話 国家資格講習④
VRヘッドをつけての模擬戦闘訓練が始まった。
最初のそれは、各々、自分に向いている武器を見出すために次々と武器を変えて行われる。
実際の刃をつぶした剣や斧などを持ち、仮想空間の魔物と1対1で戦うのだ。
他の人たちが行っている模擬戦を見ていると、VRヘッドを被って何もない所で武器を振り回して動いて下手な踊りを踊っているようにも見え、なかなかシュールな光景だ。広い運動場で十分間隔を取っていなければ危なくて仕方がない。まあ、もし他の受講者との距離が一定以内に近づけば警告が鳴るような仕様になっているらしいが。
そんな中で、洗練された動きを見せる者もいる。なにを隠そう、それはマナミサンだった。
聞いたところによると、マナミサンは幼少期から剣道の道場に通っており、高校時代は剣道部のエースで全国大会でも入賞した実績があるのだとか。
大学からも推薦入学の話があったのだが、親の反対で断念したらしい。マナミサンが実家から出てアパート暮らしをしていたり、オレの家に迷う素振りもなく転がり込んできたのには、親との確執とかそういった背景もあるのかもしれない。
そんなマナミサンは、竹刀を模擬刀に持ち替え、舞のようにも見える剣の技を披露していた。
オレはといえば……。ラグビーに武器なんてないし、格闘技とか言われたりもするけど殴ったり蹴ったりしたわけじゃない。それはもう、剣や斧を振り回す姿は無様だったのだろう。
だが、そんなオレにもしっくりくるものがあった。それは、両手で扱う、機動隊で使っているような大盾だ。なんというか、ラグビーの練習で使っていたタックル練習用のダミーミット。その扱いが、突進してくる魔物を受け止め、いなすのにまさかの適合を見せたのだ。
盾でいなした後、隙を見せた相手の横腹を盾の下部の縁で突くように打ち付け打撃を加える。我ながら、この動きはいけるのではと思う。
個人による各武器への適性を見た後は、6人組んでの模擬パーティー戦が行われた。
パーティーは受講者の中からランダムに選ばれる。VRなので、それは仮想の画面内で即座に決定され、編成される。そして複数の魔物とエンカウント。前衛、後衛も即座に臨機応変で決めなければ敵の初撃を食らう。
講習を今日受けたばかりの受講者の中には、当然ながらまだ魔法に覚醒した者がいないため、この前衛後衛のポジショニングには混乱が生じる。なにせ、現状は皆物理攻撃なので皆気が逸って前へ前へと出てしまうのだ。
オレは大盾を持っていたため自然と一番先頭になり敵の攻撃を受け止める。剣や斧などの得物を持った人が前衛に出やすく、槍やなぎなたなどの柄の長い得物が中衛的、弓や銃などが後衛に回り、時間はかかったものの、戦闘終了時には自然と陣形が作られていたのには感動した。VRの模擬戦でも十分、連携の練度は上がるようだ。
なお、魔法については前半の座学部分で講義があったのだが、ここで少しおさらいしておこうと思う。
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