第28話 国家資格講習②
国家資格講習4日目。今日から、講義は実技の集合研修となる。
オレとマナミサンは車で2時間かけて、県庁所在地のある晴田市の受講会場へとやってきていた。
ここは、晴田県晴田市にある、社団法人『探索者支援協会』が運営する『探索者支援センター』。
支援センターは、国と県が出資して作られた特殊法人が運営しているが、実際は防衛省や警察庁、自衛隊からの出向者が殆どを占めていて『民間自衛隊』とも揶揄されている、名目上は半官半民の組織である。
各都道府県に最低1か所は設置されており、探索者の国家試験の運営、探索者の育成、研修からドロップ品の売買、装備品の販売や入院施設のある医療施設も併設されている、まさに探索者の拠点という感じの設備が揃っている。
いかに、国がダンジョンからの発掘品の収集を重視しているかがわかるほどの国家予算のかけっぷりである。
「先輩、すごい設備ですね。」
「そうだな。
「
「ダンジョン入るって言ってたし、暇ではないんじゃないか? まあ、相手が狼だったら大丈夫だろう。
「ほんと、賢いネコちゃんですよね」
「もはや猫というより、猫型の人間という認識になってきてるな」
受講会場の一角でマナミサンと他愛もない会話をしていたところ、急に目の前にセンターの制服を着た一人の女性が現れた。
「失礼致します。男性の方は30歳過ぎ、女性の方はまだ10代とお見受けしましたが、合ってますでしょうか?」
「ええ、その通りですが?」
「失礼ですが、ご夫婦でいらっしゃる?」
「いえ、そんな関係では……「はい! ご夫婦です!」」
「……そうですか。いえ、失礼いたしました。実は、最近『ダンジョンに案内してやるよ』などといいつつ、ダンジョンの特性を利用して若い女性をだまして連れ込む輩が増えているものですから念のため確認させていただきました。そちら様方は、女性の方がイニシアチブをとっていらっしゃるようですので、その心配はないですね。」
最近はそんな事件があるのか。なんでも、模倣犯を防ぐためにテレビでの事件の報道は報道協定を結んで控えているのだとか。
それにしても、『ダンジョンの特性』と『女性をだます』ことの関連性がよくわからないのだが、何かあるのだろうか?
「では、講習の方、頑張ってください。失礼します。」
そう言って、その女性は離れていった。見た感じ、20代の後半くらいか。協会の制服に身を包み、背筋をピンと張った感じは、いかにも仕事のできる女といった感じだ。
というか、今の話はぶっちゃけるとオレが犯罪者予備軍ではないかと疑われたという事だよな? 物腰が柔らかかったので気づかなかったぜ。
「先輩? 女の子だましちゃだめですよ?」
「オレがそんなことできるわけないでしょうが」
「ふふ、そうですよね。それにしても、『ダンジョンの特性』って、何なんでしょうね?」
どうやら、マナミサンも同じ疑問を持ったらしい。
その件については、後日、衝撃の事実が明らかになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます