第27話 国家資格講習①
「ご主人。まにゃみ。」
「なんだ。」
「なあに?
「
「猫缶って薄味なのか?」
「成人病……いや、成猫病? に……なりますよ? なるのかな?」
「猫缶の味付けはたぶんお上品にゃんだろうけど、わたしには人間用の
「物によっては、鯖缶のほうが安いだろうに。」
「なら、今度は鯖缶大量に買ってきますね!」
「お願いするにゃ。」
「なら、〇ュールもいらないのか?」
「それはいるにゃ! チュー〇は必需品ニャ!」
――突然始まった、二人と一匹の共同生活。
当初はどうなる事かと思ったが、いまのところ大きな不都合もなく。
他愛もない会話も弾み、それまでの一人暮らしとは一転、騒がしくも楽しい毎日が続いている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
同居が始まってから早数日、いよいよ探索者の国家資格講習が始まる日となった。
「二人で受講だけど、PCは一台でいいのかな?」
「事前に申し込んでおきましたから、大丈夫ですよ。」
この講習は、合計7日間。前半の3日間は座学、後半3日間は実技、最後の1日はこれまでの講習内容を踏まえた国家資格の試験日となっている。
前半の座学はリモートでも受講が許可されており、今は自宅でマナミサンと二人、PCの前にいる。
「なあ美剣?」
「にゃあ?」
「リモートお約束の、PCを横切る猫はやらなくてもいいからな?」
「じゃあ、ご主人の頭の上に乗るのはどうかにゃ?」
「肩がこるからやめてくれ」
座学の講義は猫によるトラブルもなく、淡々と進んでいった。
内容としては、これまでに存在が確認された魔物のうち主要なものの情報、攻略法、ドロップの種類などのほか、宝箱の罠の種類、解除法などダンジョンにまつわる内容が主であり、興味深いだけでなく実際に役立つものが多く、眠気を感じる暇もない位であった。
また、魔物から攻撃を受けて受傷した際の応急処置の方法はポーションを用いたものから、医薬品を用いたもの、更には傷口の緊急縫合法など、まさに命に直結する類の内容が丸3日間続いた。
「これを聞くのと聞いてないのでは雲泥の差だな。」
「そうですね。情報って大切だなって思いました。」
「ま、美剣が全部倒すから大丈夫にゃよ」
ちなみに、知性を持つ猫、美剣も画面から離れたところで講義を聞いていた。
実際、とても有用な内容であった。
例えばオレが苦戦した灰色狼の攻略法。灰色狼は俊敏性に優れ、首と顎の力が強いため、一人で正面から相手取るにはリスクが高い。例えば正面からだったら大盾のような噛みつかれにくいもので相手の攻撃を止め、その隙に他のアタッカーが脇に回り込んで柔らかい横腹を狙う等の攻略法が紹介されていた。
オレは軽トラ結界に弾かれて体制が崩れたところを狙ったが、四肢が床に付いた状態では体勢を立て直すのが早いため悪手であり、逆に攻撃態勢で飛び掛かってくる宙に浮いた状態を狙って側面に回り込む方が与しやすいとの事であった。
そもそも魔物相手に一人で挑むというのは自殺行為であり、通常の探索者は6人で1パーティーを組むのが普通だとのこと。
この講習で知識を得たオレは、あのとき美剣がいなければ、やはりオレは死んでいただろうという思いを強くした。
もう、失敗しないぞ。
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