第25話 女? 同士の密約
「……こいつ……動くぞ!!」
ダメもとで、軽トラのエンジンをかけてみたところ、なんとかかってしまった。
サイドブレーキを下げ、ギアを入れ、ゆっくりクラッチをつなぐと――動いた。
「動いた! 軽トラが動いた!!」
オレは、まるでクラ〇が立った時のハイ〇のように喜んだ。
「……軽トラが動くのは当たり前じゃないのかニャ?」
この奇跡の意味を理解できていない
マナミサンは、事の次第を知っているようでとっても驚いている。あとで荷台の結界防御の件も教えてやろう。
これで、オレたちのダンジョン探索は万全なように思えた。
ただ一つだけ、残念だったのはダンジョンの入口の扉の幅が狭く、軽トラを外に出せないことだ。扉さえくぐれれば、4WDのスイッチを入れれば階段は上れない事もないようなのだが。
「まあ、仕方がない。よし、ダンジョン攻略の準備を整えるぞ――!」
「「おー?」」
なんかテンションが上がっているのがオレだけな気がするが、まあいいだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
マナミサンは、美剣の服とか、自分の日用品とか、必要なものの買物に行った。人間の食材のほか、美剣のためにキャットフードとか、猫の姿で連れ出すときに必要なネコカゴも頼んでおいた。
オレは、軽トラの荷台で美剣がドロップさせた魔石や毛皮の数を数えていた。
美剣は―――魔物と戦うのかと思いきや、マナミサンがいないことと、人間の姿になった事をいいことにオレにからまってじゃれついてきている。
「なあ」
「にゃあ」
「数えにくいんだが」
「気のせいにゃ」
「はっきり言うと邪魔なんだが」
「ご主人はいけずってやつかにゃあ?」
いや、はっきり言って、オレも30過ぎとはいえ、健康な男なのだ。
いくらネコミミとはいえ、10代半ばの少女に抱きつかれて平静でいれるわけはない。あそこが変な反応をして、美剣に怖がられて引っ掻かれないか心配なのだ。
「ご主人。なんか動いているにゃよ?」
「キノセイダ」
「魔物がご主人のズボンに入り込んだかもしれないにゃ。なんか暴れてるにゃよ?」
「頼むからつつかないでくれ。あと、引っ掻いちゃだめだぞ」
「ご主人の大事なご主人を引っ掻くわけないニャ」
「おまえわかってやってたのかよ!」
「昨日、マナミとお話したにゃ。美剣が先にお情けもらえるのにゃ」
「お前ら何を話し合ってんだよ!?」
詳しく話を聞くと、昨夜は女同士の話し合いがもたれたらしい。そこで、先に住人? になった美剣が先で、マナミサンはそのあとでいいのだとか。そのかわり、地上では猫と人間なので本妻はマナミサンになるとかならないとか。
オレ抜きで何を話し合っているのか小一時間ほど問い詰めたいが、藪蛇になりそうなのでやめておこう。この話題は封印だ。
まあ、その話し合いがあったからこそ、昨夜マナミサンはオレの部屋に特攻を仕掛けてこなかったってわけだな。
と、まあ、そのことと、オレの目の前で挑発してくる猫は今も今後も鉄の理性で抑え込むとして、だ。
ドロップ品の数がおかしいのだ。
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