第24話 軽トラ、ダンジョンに立つ!

 ダンジョンでは、本当にまれに、アイテムバッグなるものがドロップするそうだ。


 それは程度の差こそあれ、見た目の容量とは比べ物にならないほどの物資を収納できる代物で、使用者のイメージ次第では、ゲームや小説とかでよくあるインベントリのようにも使えるらしい。なお、生き物が収納できないというところも同様だ。

 

 一説によればその収納内部は異空間と繋がっているという話で、収納した物は、それを収めた本人か、その認めた人でなければ取り出しが出来ない。

 仮に収納した人が他者の取り出しを認めないまま死亡したときは、その収納した物は永遠に取り出すことが出来ずに失われてしまうらしい。


 また、ダンジョンでドロップしたり採取されたものは、異質化した物品とは違い、ダンジョンから地上に持ち出すことが可能で、しかもほとんどの場合その機能も維持される。

 そのため、犯罪防止の観点から、日本ではアイテムバックの所有者は登録義務があり、年に一度の中身の開示義務もあるほか、他国への持ち出しや持ち込みは税関で止められる。


 そして、その稀少度から取引される値段は高く、たとえば手提げのトートバックの外観に、風呂桶1杯分の容積があるような比較的小さい物でも一千万円程。容量がほぼ無制限のようなものになると10億円超で取引きされた例もある。




 どうやら、軽トラの荷台にも、【異質化】によってその能力が備わっているようだ。

 推測だが、荷物を収納するという荷台の機能が、異質化によってその機能を大幅に上げる結果となったのではないだろうか。


 で、美剣みけはおそらく、荷台に積み重なったドロップ品が増えるにつれ、「どっかにかたずけたいにゃ~」とか思って、それに似たような言葉を口に出したのではないか。それがトリガーとなって、収納の機能が発動したのだろう。

 なので、たとえ無意識で行ったにしても収納した本人である美剣が取り出す言葉を口にしたから取り出せたということだと思われる。



 さて、軽トラの荷台の収納能力アイテムボックス、容量はどれくらいだろうか。少なくとも、今目の前にある多量の毛皮などは収納可能なわけだが、これに関しては検証の仕様がないな。今後、使っているうちに限界量になるのを待つしか方法はないだろう。





 それにしても惜しい。この軽トラが動いてくれたなら。

 

 ダンジョン内では、エンジンや電気動力はなぜか動かないのだ。


 軽トラの車体の内側は、敵の攻撃を防ぐ絶対防御。移動する安全地帯あんちだ。

 それに、ドロップしたり、採取したものはアイテムボックスで収納出来て、重かったり多かったりで持ち帰るのを断念しなければならないという事もない。


 「まちがってエンジンかかってくれないかな~」


 オレはダメもとで、運転席に座り、エンジンキーを差し込んで回した。



 すると―――



『ドゥルルルルルルルウ』




「……こいつ……動くぞ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る