第21話 国家資格取得計画

 「では、今後の事を話し合いましょう。」


 「ああ。」


 「にゃ。」


 夕食の席、ある程度腹も落ち着いたところで、真面目モードに戻ったマナミサンがこう切り出した。


 「まず、私は探索者の国家資格を取らなければなりません。」




――探索者の国家資格。



 ダンジョンを探索するには、その所有者を除き、国家資格の取得が必須である。

 国家資格というと、何やら難しい試験をパスしなければならない感じがするが、『探索者』の場合は少し毛色が異なる。

 国には、地下迷宮から採れる資源をより多く確保すべく、探索者の数も増やしたいという思惑がある。それなのに、例えば年に1回しか受験できない難関な試験などを設ければその数は一向に増えていかないという事情があるのだ。

 なので、頻度は月に1回、各県庁所在地で都道府県が開催する丸7日間の講習に参加し、最終日の実技と座学の試験に合格すれば資格が得られる仕組みになっている。

 ちなみに最終日に行われる試験は、6日間の講習を真面目に受けていれば比較的容易に合格できるレベルのものである。


 「講習は、来週から晴田市で行われます。先輩はどうしますか? ダンジョンの所有者は、必ずしも資格はなくてもいいんですよね?」


 「ああ、そのことだが、オレも資格は取っておこうと思っている。なんせ、準備不足で死にかけたからな。少しでも知識も能力も得ておかないと。」


 「わかりました。じゃあ、講習には一緒に申しこんでおきますね。最初の3日は、座学だからリモートでいいとして、後半3日間の実技と最終日の試験はどうします? 晴田市に泊まります?」


 講習が行われる県庁所在地がある晴田市は、オレの住む丸館市から車で片道約2時間、往復で4時間だ。毎日通うにはいささか負担が大きいので、この辺に住む人は晴田市に出張などする場合は宿泊することも多い。


 「ちょっと待ってニャ。ご主人が4日もいないとわたし飢えてしまうニャ。」


 「そうですね、美剣ちゃんがいますから、通いにしましょう。往復は私の車でいいですね?」


 「ああ、よろしく頼む」 


 あれよあれよとマナミサンも同居する羽目になってしまったが、正直、車が使えるのはありがたい。軽トラ亡き今、毎日電車で晴田市と往復するよりは車のほうが気が楽だ。


 「オレたちがいない間、美剣はどうする? ついてきて車の中で待ってるか?」


 「暇を持て余しそうだから、残ってダンジョンにでも入ってるにゃ。」


 「じゃあ、お弁当は美剣さんの分も、私が作りますね!」


 「わーい、お弁当にゃ!」



 「あ、そういえば、美剣の人化した時のために、服とか買っとかなくちゃだな。さすがにオレが女児の服を買うのはためらわれていたんだが。」


 「じゃあ、私が買ってきますよ?」


 「助かる。じゃあ頼むな、早坂さん。」


 「ま・な・み」


 「……ああ、よろしくな、まなみ……」


 「はいっ!」


……うーむ、すっかり彼女らのペースに飲み込まれてしまっているな……


 

 「そういえばご主人」


 「なんだ」


 「今日のダンジョンでの事なんだけどにゃ、不思議なことが起きたニャ」


 「どんなことだ?」


 「軽トラの荷台に積んだ、ドロップ品が消えてしまったのにゃ……」 



 

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