第20話 増える疲労と同居人
「ここが私の永久就職先ですね!?」
「今なんか不穏な言葉が聞こえた気がしたんだが?」
「いやですねえ、先輩。
「そうならいいんだが……。っていうか、早坂さん!? そんなキャラだったっけ?」
「い・や。真奈美って呼・ん・で。」
「ほんとにそんなキャラだっけ!?」
なんかウチの猫とキャラ被りしてきた気もするのだが……。
そういえば、ウチの猫はまだダンジョンに居るのだろうか? 玄関で「おかえりにゃ」とか話す猫と鉢合わせにならなくてよかった。
そんなことを思っていたその矢先、玄関に返り血を体中に浴びた真っ赤な猫が現れた。
一瞬、美剣が酷い怪我でもしたのかと驚いた、が、足取り軽くとてとてとてと走ってくる様子からそれはないと一安心したところで、
「ごしゅ……に……にゃあにゃあにゃあにゃあ」
「鳴きまね下手か! い、いや、こっちの話……」
「まあ! なんてかわいい……おぞましい? ねこちゃんですね? 先輩のねこちゃんですか?」
「いや、早坂さん? もっと違う反応ないの? 血まみれなんだよ!?」
「い・や。ま・な・みって呼んで」
「真奈美さん!?」
「ま・な・み!」
「まなみ!?」
「はい! よくできました! じゃあ、私はねこちゃんとお風呂に入ってきますね! お風呂場どこですか?! あっちですね!」
そういうと、マナミサンは血まみれの美剣を躊躇することなく抱え上げ、浴室へと向かっていった。
「はあ、風呂に湯入ってないんだが……」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その後、たっぷり2時間以上もかけて風呂に入っていたマナミサンと美剣が戻ってきた。
その間、オレは飯の支度をしていたわけだが、
「この猫ちゃん、
「!!!!!!!!」
「ご主人、ごめんにゃ。うかつにもしゃべってしまったにゃ。」
「秒でバレてんじゃねえか!」
「うう……湯船に浸かるのがあんなに気持ちいいものとは思わなかったニャ」
「そうですよー! 美剣ちゃん、湯船で『極楽にゃ~』って言ってたんですよ!」
「どこから突っ込めばいいんだ!?」
―――猫は、水をかけられるのが嫌いらしい。シャンプーとか、シャワーや水道などで洗われるのを極端に嫌う。
なので、猫は風呂ギライと思われがちなのだが、実は、湯船に浸かるのは嫌いではないのだ(個体差あり)。
必ずしも泳げないわけでもなく、犬かきならぬ『猫かき』の出来る個体もいるのである――。
そんな、猫の生態を知っていたマナミサンが、シャワーで洗いながら湯船にお湯をため、そしてゆっくりと二人? で浸かって親睦を深めた結果、警戒を解いてしまった美剣が思わず人間語をしゃべってしまったという顛末らしい。
しかも、その後は根掘り葉掘り質問攻めにあったようであり、もはやマナミサンにとって、美剣のこれまでの事で知らないことはないようだ。
「そういうわけにゃ」
「そういうわけです。」
「はあ……そういうわけなら仕方がないな……って、マナミサン? なんでしゃべる猫に順応してるの?」
「私、口は堅いですよ? 家庭の秘密は守りますよ。あと、ま・な・み!」
家庭って? アレオカシイナ?
というわけで、ごまかす必要も、一から説明する必要もなくなったのだが、昨日に続き非常に疲れる一日となったのであった……
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