第18話 元同僚からの連絡
「こんな時間になんだろう?」
見ると、同僚――いや、元同僚というべきか。送り主は早坂さんだった。
珍しいな。仕事の引継ぎの件か何かかな?
そう思いながらアプリを開く。すると――
『先輩! 実は、私も仕事辞めちゃいました! なので、これからの事について相談にのって下さい! 明日ってお時間ありますか?」
なん……だと……。早坂さんまで辞めたというのか。
おそらく、いや、間違いなく、オレが衆目の前であのクソ主任からの誘いの件を暴露してしまったから、職場に居づらくなってしまったに違いない。
そうして、オレが罪悪感に苛まれながら、明日は時間はいつでも空いていると謝罪も込みで返信したところ、
『あーよかった! ありがとうございます! ちゃんと責任取って下さいね!』
うん、明るくていい子だ。文書も元気にあふれている。だが、責任云々は、あたらしい仕事を見つける手伝いをしろってことだよな?
「ご主人。女かにゃ?」
「確かに女性からだが、お前の表現するところの女ではない。」
「またまた~、でも大丈夫ですにゃ。女がいようがいるまいが、ちゃんとわたしが夜伽しますからにゃ」
「猫の身体で何をどうするのか逆に興味があるのだが!?」
すると、美剣が布団の中に潜り込んできたので、癒しのため、猫の毛皮と肉球を思う存分モフらせてもらった。
おかげで、その日はぐっすり熟睡できた。
――翌朝、
「ご主人、昨夜は激しかったにゃ」
「しゃべらなければいい
「ひどいにゃ。わたしのあいでんてぃてぃを否定しないでニャ」
「アイデンティティなら、もっと別のところで発揮してほしいのだが」
やっぱり、話し相手がいるというのはいいものだ。たとえ、相手が猫だったとしても、毒舌やおバカトークだったとしても。
朝食の目玉焼き乗せトーストを器用に食べる美剣を見ながらそんなことを考える。
「ご主人? 今日はお出かけするにゃ?」
「ああ。お前は留守番な。」
「やっぱり、会う相手は女なのにゃ? その女にわたしを会わせたくないのにゃね?」
「男だろうが、女だろうが、しゃべる猫に会わせる気はない。」
「つれないにゃ」
「冗談はさておき、お前はどうする? 昼寝か?」
「にゃ~、ダンジョンはいってもいいかニャ?」
「危ないぞ?」
「あの犬野郎くらいなら、楽勝にゃ。」
うーむ、どうしよう。確かに美剣は強いが、一人? 一匹? で行かせるのが不安なのもまた確か。
だが、こいつをヒマにするとなんか余計なことをしてご近所バレしそうな気もして怖い。
「わかった。そのかわり、あの軽トラがある部屋の中だけな。危なくなったら荷台に避難しろ。」
「むう~。ものたりにゃいけどわかったにゃ」
―――オレは大きな不安を残しながらも、美剣を置いて早坂さんとの待ち合わせ場所に向かった。
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