第17話 キミの名は

 にゃん公を風呂にぶち込んで、わしゃわしゃと洗った。



「しくしく……お嫁にいけないニャ……」


「安心しろ、需要はない。」


「ご主人、責任取ってニャ」


「気が向いたらな」


「わたしの扱いがひどいにゃ」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 今日は二人? 一人と一匹? で夕食を摂った。

 

 いつも食事は一人だったオレにとって、相手がしゃべる猫とはいえ、会話をしながらの夕食はそれなりに楽しいものだった。

 

 にゃん公の夕食は、キャットフードなど家には置いてなかったのでオレと同じ人間食だ。魚も買い置きはなかったので冷凍食品のハンバーグと白飯だが。




「ご主人」


「なんだ」


「いくらわたしがネコだからって、どんぶりにごっちゃ盛りはおしゃれじゃないのニャ」

 

「だっておまえ、この前までそれで旨そうに食ってたじゃないか」


「もう以前のわたしじゃないにゃ。もう立派なレディーキャットにゃ。あと、はんばーぐにカツオ節は合わないと思うのにゃ」


「サービスのつもりだったんだが?!」


「でも、ありがとうにゃ。ご主人と一緒にごはん、おいしいにゃ」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





 夕食を終え、まったりとした時間。




「で、お前の名前だが」


「にゃっ!!!!」


「本当にオレがつけてもいいのか?」


「ご主人につけてもらいたいですニャ」


「わかった。では……お前の名前は……」


「にゃ……(どきどき)」





「『ミケ』だ。」


「にゃっ? 普通の猫ですニャ!?」


「まあ聞け」


「にゃ」




「ダンジョンで、お前が、灰色狼からオレを救ってくれた時、」


「にゃぁ?」


「颯爽と飛び込んできたお前が、とても美しく見えた。」


「にゃにゃにゃ!?」


「狼を一撃でやっつけたお前のツメは、まさに美しい剣だった」


「てれるにゃ」




「だから、美しい剣と書いて「美剣みけ」。オレはお前をそう呼びたい。」



「にゃーーー! 普通の猫の名前なのになんかかっこいいにゃー!」


「これだと、ふだん、猫の姿のときに、お前を呼んでも変じゃないだろ? 下手に人間のような名前にしたら、人に聞かれたら変に思われるからな。お前の事は他の人にばれるわけにいかないから。」


「わかったにゃ! 気に入ったニャ! 今日からわたしは『美剣みけ』にゃー!」


「あーよかった。気に食わないって言われたらどうしようと思った」


「あ、でもご主人?」


「ん?」


「わたしを呼ぶときは、カタカナで呼ばないで、ちゃんと漢字で『美剣みけ』って呼んでニャ?」


「ああ、わかったよ美剣みけ、これからよろしくな。」


「ハイなのにゃ!!」

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