第13話 異質化、そのチカラ
どうやら、猫耳少女だけでなく、軽トラまでも【異質化】していたようだ。
異質化した軽トラは、軽トラ自体と、その内部にいる者を外からの攻撃から防ぐ結界の能力を持っているようだ。
他にもどのような能力を持っているのか気になる所ではあるが、今は目の前の灰色狼を何とかするのが先決だ。
「にゃん公!
何度も結界に弾かれても懲りずに飛び掛かってくる灰色狼。
その都度顔面をしたたかに打ち付けているはずだが、特に弱っている様子はない。
この結界は、防御するだけで攻撃者にダメージを与えるような性質のものではないようだ。
またもや飛び掛かってくる灰色狼。
オレは、狼が結界にぶつかるその瞬間に打撃を加えようと手斧を振り下ろす。
バキィィィィイ!
すると、オレの攻撃も結界に弾かれた。
そうか、この結界は内側からの攻撃も弾いてしまうのか。安全地帯から一方的に外に攻撃を加えるという選択肢は潰えてしまったようだ。
ならば、外に出て迎え撃つしかない!
灰色狼が結界に弾かれたその瞬間を狙い、オレは軽トラの荷台から躍り出る。
体勢を整えなおす前の狼の頭部に向けて、大きく振りかぶってからの手斧での一撃を加える。
ガキィン!
「なにっ!」
灰色狼は崩れた体制のまま、首から上だけを器用に動かし、オレの手斧の打撃を歯で
そのまま、その強靭な顎と発達した犬歯で銜えて離さず、力比べのような様相となってしまう。
「くっ! コイツ! 力が強い!」
見た目は少し大きめの野犬といった大きさだが、その膂力は見た目よりはるかに強く、オレは手斧を手放さないように必死に掴んでいるだけでやっとであり、首を振る狼の挙動によって体ごと振り回される。
これはまずい! 振り払われる!
そう思った瞬間、視界の隅から流れるようにこちらに突っ込んでくるネコミミが見えた。
「ご主人をはなすのにゃー!!」
飛び込んできたにゃん公が、右手? 右前足? を猫パンチのように一閃する。
「猫をなめるなにゃ~!!」
すると、灰色狼の頭部と胴は、首のあった位置を境に両断されていた。
「!!!!」
「!!??」
――― 一撃。
一撃で灰色狼を屠ったネコミミ少女の手には、長く鋭いネコツメが狼の返り血を滴らせている。
「――にゃん公、お前……すごい強かったんだな……。」
「……わ……わたしも自分でびっくりにゃ……」
―――――――ダンジョンの発生に巻き込まれ、【変異化】したものは、
そのダンジョン内での戦闘に恩恵のあるものであることが多い。—―――――
軽トラは鉄壁の守りを、
ネコミミ少女は必殺の攻撃力を、
其々得ていたようである。
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