第12話 軽トラの異質化

「グルルルッルウウルアア!!」


「「!!!!」」 


 ダンジョンの発生に軽トラと共に巻き込まれて、ネコミミ少女の姿に【異質化】してしまった三毛の野良猫と軽トラの荷台でおはなししていたその時、幌の外から獣のような咆哮が聞こえてきた。


「ご主人! なんかきたにゃ! こわいにゃ!」


 オレは手斧を構えて幌の後ろから顔を出して周囲を確認する。


 


「犬……? いや、オオカミか!」


 そこには灰色の体毛を生やし、異様に発達した犬歯を口の中から伸ばして咆哮を上げる、大きめの野犬のような4足歩行の獣の姿があった。


「にゃん公! オオカミがいる! たぶん敵だ!」


「にゃ! オオカミですと!? むう~! 犬野郎には負けないですぅ! 前言撤回ですにゃ! こわくないニャ!」


「犬じゃない! オオカミだ! 噛みつかれないよう注意しろ!」


「ところでご主人! わたしのその『にゃん公』っていう呼びかた何とかならないですかニャ! かわいい名前とか付けて欲しいですにゃ!」


「あとにしろ!」




 灰色オオカミは軽トラの後方に回りこみ、カバーを上げた幌の中にオレたちの姿を視認すると、一気に加速して飛び掛かってきた!


「来るぞっ!!」


 オレは、噛みついてくるであろう灰色狼の鼻面を迎撃すべく、手斧を体の正面に構えて半身で身構える。

 

 タイミングを計り、振りかぶった手斧をまさに叩きつけようとしたその時、


       

   バチィィィィッ!!


 軽トラの外周に何か電撃? のようなものが走り、それに顔をしたたかにぶつけたかのような挙動で灰色狼がはじき返される。


「「!!??」」


 

「にゃん公! お前、今何かしたか!?」


「なにもしてないにゃ! その呼び方やめてにゃ!」


 むう、にゃん公は何もしていない。当然オレも何もしていない。

 

 それなのに、こっちに突進してきた灰色狼は軽トラの外周部で弾かれ、今もまた、再度突進してきては謎の電撃? によって弾かれている。


 この状況が示す事を鑑みると……


「軽トラに結界? が張られている!?」


 

 冷静になって、灰色狼が弾かれる様を注視する。

 

 灰色狼が突進して弾かれるたびに発生する電撃? のような衝撃が発生するとき、軽トラの外周に沿って、軽トラ全体が一瞬、光を放っている。

 

 まるで、軽トラ全体を守っているように。




 灰色狼の攻撃を弾く様は、やはり、軽トラの周囲に結界のようなものが張られていると思われる。


と、いう事は、


「軽トラも【異質化】してるのか!」


 考えてみれば、荷台で寝ていたにゃん公が【異質化】したのだ。軽トラ自体が異質化していても何の不思議もないではないか。


「でも、軽トラの外見は全く変わってない…… あ! 外見が変わらないパターンの【異質化】なのか!」



 どうやら、猫耳少女だけでなく、軽トラまでも【異質化】していたようだ。



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