第11話 巻き込まれた猫
軽トラの幌の中から物音が聞こえる。
魔物が入り込んでいることを警戒し、斧を構えたまま幌の後ろカバーを開ける。
そこには―――
「ゔにゃぁあああああああああああ!! こっちくるなにゃああああああああ!」
「ねこぉ!?」
猫のような声? でこちらを威嚇する人型の個体。
その頭上には、毛を逆立てた立派な猫耳が……ネコミミ?
ネコミミの下には、まだあどけない10代前半の少女の面影。
「ゔにゃぁぁああああ! わたしはおいしくないニャあ! あっちいけニャあ!」
だが、そのかわいらしいであろう顔は、恐怖のためか半狂乱になっていて鼻水とか涙とかで台無しであった。
そして――
「なんで全裸のおんなのこがここにぃぃいいいいい!!」
「ゔにゃぁあああああああ!!」
その少女は、全裸だった……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ひとしきり叫び声をあげた後、ようやく落ち着いた一人と一匹? は互いに向かい合って、軽トラの荷台の上に座っていた。
「にゃんだ、よくみたらご主人様じゃないですかにゃ」
「ちょっと待て。誰が誰のご主人だ?」
「あなたが、わたしのご主人様ですにゃ」
「聞き方を変えよう。なぜに、オレがお前のご主人様なんだ?」
「だって、私のねぐらの持ち主だし、たまにエサくれたじゃにゃいですか」
―――!!! にゃるほど! わかった! って、思わず「にゃ」が移ってしまった!
こいつは、ときたま車庫に入り込んでいた野良猫か!
別にいたずらするわけでもないから放置していたし、残飯が出た時には皿に乗せて外で食わせたりはしていたが……まさか、オレの飼い猫という認識になっていようとは……。
この状況を推理すると、
この野良猫? オレの飼い猫? は、ダンジョン変異があった時、軽トラの荷台に潜り込んで寝ていたと。
そして、ダンジョン発生に巻き込まれた軽トラごと、ダンジョンに入り込んでしまったと。
そうしたら、【異質化】してしまい、人間の姿になってネコミミ少女になってしまったと……いうわけか。
「そういうわけですにゃ。」
「いやお前、のみこみ早すぎだろ? 元猫だよな?」
「にゃんか、この姿になったらいろいろわかるようになってたにゃ。」
「知能まで進化したというのか……!」
改めて、元猫の姿をまじまじと確認する。うむ、ネコミミだ。あの三毛の野良猫だったことを裏付けるように、耳も尻尾も三毛猫の紋様がある。
「ところで……」
「にゃ?」
「なんで全裸なんだ?」
「猫は全裸がデフォですにゃ」
くっ……! 元猫に論破されるとは……。
しかし、この容姿は小学生高学年? 中学生? くらいの美少女だ。
それが全裸で目の前に。
ダンジョン内でなく、地表の世界なら事案待ったなしだ。
おまわりさん、おいらです。
正直、眼福なのは確かなのだが、目のやりばに困る。
それに、オレはロリコンではない。
「何か着てくれないか?」
「着るものがないにゃ」
くっ……! その通りだ……。
「グルルルッルウウルアア!!」
「「!!!!」」
そんなやり取りをしていると、外から獣の咆哮のような声が聞こえてきた。
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