第7話 脱サラダンジョン②
「おや~、昨日休んだタケダクンじゃないですか~。突然休んだくせに、出社早々女子社員にちょっかいですかぁ~? いい身分ですね~」
癇に障る声で、早坂さんとの会話に割って入ってきたのは主任の齋藤だ。下の名前? そんなの知らんし覚えたくもない。
こんな奴のところに嫁なんか来るはずもなく、いい年して独身だ。この件はあんまり掘り下げるとオレにもブーメランが来るのであまり触らずにおこう。
この齋藤は、ことあるごとにオレを目の敵にしてくる。
こいつも、そこそこ仕事はできるのだろうが、いかんせん、オレが言うのもなんだがオレの方が仕事ができる。と思う。
40歳を過ぎたこの男は、それを知ってか知らずか、自分が年功序列でオレより上の主任の立場にいると周りに噂されるのが嫌なのだろう。
何かにつけて、あからさまにオレを貶め、自分を持ち上げようとしてくるのだ。
「齋藤主任、昨日は突然有給頂いてしまって、申し訳ありませんでした。」
いくら気に食わないからと言って上司は上司だ。そしてオレは社会人だ。
休みを取った後ろめたさもあり、慇懃無礼と捉えられないように丁寧に謝罪をしたのだが―――、
「はぁ? 有給? 何にも聞いてないよ? 突然無断欠勤なんて、キミは何様なんだい? 社長の耳にも入れておいたからね? いや~、怒ってたよ~社長。」
え? 一体どういうことだ? オレは昨日確かに部長に電話をして、ダンジョンの件で休むと伝えたはずだが……
「いや~、ダンジョンができたって話は聞いたよ? 部長に電話したんでしょ? でもキミ、直接の上司である僕が有給認めたわけじゃないからね~? そもそも、うちの会社にダンジョン休暇なんて存在しないでしょ?」
えっ……?
「ということで、ダンジョンがらみの有給が認められない以上、キミは欠勤する理由がないわけだ。したがって、昨日のキミは無断欠勤扱いになるんだよ? 職務規定ちゃんと把握してる? ん? いくら仕事ができるからって、そのへんおろそかにしちゃだめだよ? キミ? ね? 早坂クンもそう思うでしょ?」
キミキミキミキミうるせえなこの野郎。その論法だと有給にはならないにしても、連絡してるんだから無断欠勤にはならねえじゃないか。頭に虫湧いてんのかコイツ。
「……でも、休む件については部長に連絡したのですが……。」
と、オレは反論するが……
「だ~か~ら~! 主任の僕が認めてないの! キミは、直接の上司の主任である僕には断りを入れてないの! 職務規定読んでみな? 『休む時は直接の上司に連絡して許可を得る事』って書いてあるでしょ? ん?」
こいつ、そう来たか! 部長だって直属の上司に違いはないのだが、こいつは直属という文言が職務規定の冊子で『直接の』とプリントミスされているところをかさにかかって攻めてきやがった!
「昨日、キミが突然休んじゃったから、そのせいで早坂クンは大変だったんだよ? ね? 早坂クン? まあ、でも、この僕が優しくフォローしてあげたんだけどね。だよね? 早坂キュン?」
そして、コイツ、齋藤は年甲斐もなく早坂さんに懸想してセクハラまがいの事をしているのだ。
あ、そうか。そういうことか。コイツは、早坂さんがオレになついているのが我慢ならなくて、普段の嫌味とかだけじゃ飽き足らず、早坂さんの前でオレを貶めにかかってきたのか。
ブチッ
オレの中で何かが切れてしまった。
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