第3話 どうするダンジョン
「すんませ~ん、ウチにダンジョンできちゃいました~」
とりあえず、当局にダンジョンが発生したことを電話で報告する。この国の法律では、ダンジョン発見後24時間以内に届け出義務があるのだ。
「で、どうすっかな~このダンジョン?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
個人所有の土地にダンジョンが発生した場合、選択肢は二つある。
一つは、国に売却する方法。
国の調査機関が、第3者機関と共にダンジョンの査定を行い、適正な価格査定の元、現金でもって双方同意のもと売買契約を交わすのだ。
はっきり言って、これが一番無難なように思える。
だが、その値段はお世辞にも高く売れるとはいいがたい。せいぜい数十万円から、運がよければ軽自動車1台分くらいである。
まれに、地下数十層にわたる広大なダンジョンが発見されて豪邸が建つくらいの金額を手にした人もいるが、宝くじ特賞以上に低い確率であり、しかもその経緯は全国ニュースでもって流されてしまうため、急激に親戚が増えたり厄介ごとが増えたりして確実に地元にはいられなくなってしまう。
そのようなことがなく、通常の規模のダンジョンだったとしても、その場所は国有地になってしまう。
自分ちの庭に国有地があることになるのだ。しかも、そこから有用な資源が出るとなれば、自衛隊やら調査団らの集団が自分ちの庭で連日キャンプを行う事態となってしまうリスクもあるのだ。
もう一つは、自己所有とする方法だ。
この場合も、危険度測定という名のもと国の調査機関による査定は無料で行われるが、その結果として査定された規模に相当する税金を、そのダンジョンを所有している期間は納めなくてはならない。
そのうえ、危険管理という義務が課せられ、もし魔物がダンジョンから出てきた場合には速やかに当局に報告する義務が課せられる。
仕事などもあり、夜は寝るという人間の生理上、24時間ダンジョンの監視をしているわけにもいかないため、多くの場合は魔物の溢出の監視カメラと、それに連動したアプリの導入も義務づけられ、それの設備投資も全額自己負担となるのだ。
だが、リスクだけではなくリターンもあるのが、この自己所有の魅力である。
自己所有のダンジョンは、自身、もしくは自身が代理と認めた国家資格取得の探索者による探索が自由なのだ。ただし、もちろんその探索にかかる生命身体財産への損害は自己責任となるのだが。
なお、所有者自身で探索する場合、国家資格の取得は義務ではないが、取った方が望ましいという努力義務とされている。
探索で得られた物資は、高率の税金がかかるものの大概のものは高価で取引きされ、その売買は自由である。但し、反社会勢力や敵性国家への輸出には重い罰則が設けられている。
つまり、ダンジョンの自己所有者は『一攫千金が可能』という事だ。
世の中のダンジョン所有者の中には、腕のいい探索者を雇い入れ、莫大な富を得たものも少なくない。その反面、実入りが少ないダンジョンというものも当然存在し、その場合は税金や設備投資、人件費などの諸費用が収入をはるかに上回る結果となるため、自己破産してダンジョンが国に差し押さえられた例もまた数多く存在する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「いますぐどうするかなんて決められねえよな~」
とりあえず、オレは国の査定の結果を待つことに決め、会社に休みの連絡を入れた。
問題の先送りである。
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