第4話 巻き込まれた軽トラ
自宅の車庫がダンジョンに取り込まれたその日、オレは会社を休んだ。
これは決してズル休みなどではない。
自己所有の敷地の中にできたダンジョンを報告するのは国民の義務なのだ。その義務のなかには、国が派遣するダンジョン調査団の調査に立ち会うことも含まれているのだ。
なので、今日のオレは有給扱いになる……はずだ。ちなみに零細ブラックなオレの職場の職務規定に、ダンジョン休暇なんてものはない。社会通念上、有給休暇が適用されるはずだが……ウチの会社に社会通念なんてないかもしれない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
久しぶりのまったりとした午前中をダラダラして過ごし、簡単な昼飯を食って午後になると、ようやく調査団なる方々が到着した。
この調査団は、専門性担保のため各都道府県の管轄となっていて県庁所在地から派遣されるため、田舎であるオレの家に到着するまで時間がかかったというわけだ。はるばる遠くまでお勤めご苦労様です。
簡単な聞き取り調査のあと、さっそく調査が開始された。
安全確保のための重火器装備の自衛隊員や、地元警察署の担当部署の係員も調査に同行している。ライフル銃? なんぞを生で見たのは初めてだ。
約2時間後、調査が終わったようだ。
調査官の人が話しかけてきた。
「正式な文書は後日送付しますが、迷宮型で深度2層、【脅威度】は下から2番目のFランク、【資産期待値】も下から2番目のFランクといったところですかね。あとは、発生直後という事と、構造上、過去の事例との類似性もあって【成長可能性】が割と高くDランクです。」
「はあ。」
「正確な数字はまだはっきりと言えませんが、推測だと、今月中に売却すれば約80万円、ひと月以上待って成長すれば100万以上になるかもしれません。ですが、逆に成長の兆候なしと見なされれば40万くらいまで下がるでしょうね。どうします?」
なんだこの今すぐ決断しなければならない空気は。どうします? と聞かれてもどうすればいいかわからねえよ!
「あ、あと軽トラ? 車庫においてたやつですかね? 巻き込まれてましたね。でも、見た感じ原型そのままだったので、【異質化】はしてないようです。壊れてはいないと思いますが、ダンジョン内じゃ動かないでしょうからね……地上に引き上げれば使えるんでしょうけど、入口が狭いので無理ですね~。」
なんと、オレの愛車軽トラちゃんは無事だったか。だが、どうやら入口が狭くて地上には戻せないらしい。
あ~あ、明日から通勤どうしよう。あたらしい車買わなきゃな……
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