一章 華仙女は花を詠み、花で祓う③
通されたのは最低限の調度品しか置かれていない質素な
「さて。遠回しなのは苦手だからな、単刀直入に話すとしよう」
秀礼が切り出すと、
「華仙紅姸。お前に引き受けて欲しいことがある」
「わたしに、でしょうか」
「ああ。
その口ぶりから、秀礼なりに見当をつけている。彼は紅姸をじっと
「おそらく
秀礼の言葉が
「お前に見せた通り、私が持つ
紅姸が使う華仙術は花詠みと花渡しの二つ。そのうち花渡しは
(でも……華仙術を使っていいの?)
髙は、仙術を
そんな紅姸の迷いを
「ここまで来て、この話を聞いているのだ。
これは
(どうして脅してまで、
だが問うことはできなかった。秀礼の眼光はそういった
「里を出た時から
元より居場所のない身。里にいた時から死の覚悟はできている。白嬢の代わりになれと命じられているのだ、この場で何を告げられても従うつもりであった。
「…………」
これに秀礼は
「覚悟のある
「……そうだな」
「
「審礼宮に置くわけにもいかないからな……どうするか」
秀礼が問うも、清益は策が浮かんでいるようだった。彼はにっこりと微笑む。
「帝の妃として後宮に迎え入れては。妃であれば後宮内を自由に調査することが可能です」
表情変化に
内廷に立ち入れる娘は限られている。客人として迎え入れることはあるが、それは正式な手続きを
秀礼と清益の話し合いは、紅姸を
「妃か……うまく行くだろうか」
「遠方にある
「
「帝には紅姸が仙術師だと明かしましょう。鬼霊祓いができると伝えれば、後宮に置く意味を理解してもらえるかと。永貴妃など他の者には帝を苦しめる
「そうだな。不必要に
秀礼は再び考えこんだが、結論を出すのに時間はかからなかった。清益に向けていた視線が、今度は紅姸を
「よし。お前を妃に仕立てる。よいな?」
だが、
「ではこれで決まりですね。あとはこちらで準備を進めましょう」
紅姸が引き受けたところで清益がそう言った。これで話は終わるのかと思った矢先、秀礼が手をあげた。
「待て。華仙紅姸、お前に聞きたいことがある」
秀礼は不満そうに顔をしかめていた。紅姸はその場に膝をついたまま、問いかけを待つ。
「先ほどの鬼霊祓いだ。鬼霊が現れても、お前は華仙術を使うことを
紅姸は
(どう答えれば良いのだろう。この人たちが、華仙術をどのように
秀礼や清益も、いつ紅姸に危害を加えるかわからないのだ。体が
「……鬼霊を……
これを聞いて秀礼らがどのような反応をするのかわからない。
「際限なく現世を
「その理由はわからなくもない。お前は私相手に『
しかし秀礼の言葉はそこで止まらなかった。再び
「ではなぜ、躊躇った? それほど鬼霊を憐れむのならば、
「それは……」
ついに紅姸の言葉が
「…………」
これを語ることはできなかった。仙術師という引け目と迫害への
一向に
「……華仙とはわからぬ一族だな」
秀礼は
「お前は華仙術を扱い、鬼霊を祓った。それほどの力がありながらも死の覚悟があると話し、
「…………」
「里の者たちも、お前に対しては強くあたる。家族だろうにあのような物言いと別れは理解できん。華仙一族とは
秀礼は、一度華仙の里に来ただけで、紅姸を取り巻く環境を言い当てていた。鋭い観察力である。当たっていることもあり紅姸には
紅姸は黙りこんだ。虐げられていたと自ら言うことはできず、場は
「秀礼様。もしもこの者の
黙りこんだ紅姸と、紅姸を疑う秀礼を見かねての提案だろう。しかし秀礼はすぐさま「いらん」とこれを断った。
「他の者が良いわけではない。少し気になったために聞いただけだ」
紅姸としては華仙の里に戻されては困るところだった。次に白嬢が見つかれば、紅姸は
その秀礼はまだ紅姸を見つめていた。
「しかし不思議だな。華仙一族で
連翹が散る前。華仙紅姸の姿は後宮にあった。華仙の名を
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