第2話 モブ勇者は呆然とする
何はともあれ、あの地獄のような魔族領から生きて戻ってきたので良しとした。性別は変わってしまったが元々女だった事もあり、それほど不安は無かった。精神年齢でいえば前世の年齢の4分の1も生きていない事が幸いだった。
(違和感の大元が無いだけで安堵出来たし…)
そして鑑定結果にも鑑定偽装スキルを施し、
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名前:ユヅキ
性別:女
年齢:18
職業:狩人
属性:無
レベル:20
ギフト:遼遠偵察
スキル:空間収納、気配遮断、木工
建築、複合照準、照準隠蔽
耐性:なし
称号:狩人
状態:正常
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HP:630/630
MP:200/200
魔力:630/630
攻撃力:20
防御力:10
敏捷力:40
体力:50
精神力:40
器用力:10
知力:10
幸運値:63
経験値:1/63
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何処にでも居る狩人とした。
遼遠偵察、距離を問わず斥候を行えるギフトを得ているが説明文も偽装したのでバレる事はないだろう。
(くよくよしてもダメだね。終わった事だし)
そう考えると無為に過ごした前世の70数年は無駄ではなかったらしい。輝き続ける術を失って生き抜くための知識と経験を貪った。
それ以外は才能を継ぐ母体として生き存え興味無い女の悦びが正直言って嫌だった。
相手が盛ったオークのような男性で、見窄らしい断崖絶壁の胸を持つ身体を求めてきてね。
(今は、見窄らしい身体……ではないかな?)
6年もの間、男としてオークのような元亭主の気持ちを理解しようと思ったけれど、どう考えても理解出来なかった。
その結果が6年間彼女無しの私生活だった。
というよりアイクの裸を見た女の考えが読めたから肉体接触を回避したともいうけれど。
一先ず、水鏡を姿見の大きさに変え、
「鍛え抜かれた肉体が消えたのは少し惜しいかな。まぁ、どれだけ鍛えても最後は魔物の餌になるなら意味はないよねぇ」
麻服越しに自身の両胸を持ち上げつつ前後を振り返りながら肉体状態を鑑定した。
「身長は148かぁ。何気に低いなぁ。こちらは上から80、59、90っと、やっぱりCカップはあるのね。今世では子供を欲していないから安産型でもメリットが感じられないけど」
発育はそれなりに良いようだ。
自身の身体の大きさを正確に理解しないことには服を作る事も出来ないから。
「って、ここですることでもないか」
不意に自分の行動がバカっぽく思えたため、水鏡を魔力に戻して周囲を見回した。
時刻は森の影から察するに午前中だろうか?
森と空の境を探し、元世界同様1つしかない太陽を右手で目を覆いつつ見上げる。
「丁度、9時過ぎかな?」
時計の無い貧しい生活ではなく時計という機械が存在しない世界だ。時刻と年齢を把握するのは自己鑑定魔法だけとなる。
仮に詳細を示すなら、
「【ステータス】…【ディテール】…」
自己鑑定魔法の鍵言を発して詳細を意味する鍵言を追加する。
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勇国歴:892年・8月1日・09:59
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名前:ユヅキ
性別:女
年齢:18
誕生日:892年8月1日
職業:弓術士
属性:無・水・火・風・土・闇
魔力色:銀
レベル:100
ギフト:遼遠偵察、原点回帰
隠し:自動翻訳(言語理解/転生特典)
成長促進(倍加付与/転生特典)
魔法書庫(創造改良/転生特典)
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スキル:熟練度は全て最大値
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多属性、魔力感知、透視、暗視
共感覚、複合照準、照準隠蔽
自動照準、空間収納、空間転送
空間転移、変装、疾駆、跳躍
気配遮断、隠密跳躍、回避術
罠感知、罠設置、短剣術、槍術
会話術、礼儀術、瞑想、裁縫
解体、木工、建築、鍛冶、炊事
洗濯、鑑定偽装、魔力操作
魔力隠蔽、魔力圧縮、魔力譲渡
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耐性:状態異常無効、威圧無効
隠し:隷属無効(洗脳回避/転生特典)
称号:狩人、弓の勇者、魔王殺し
状態:正常
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HP:30300/30300
MP:12000/12000
魔力:90900/90900
攻撃力:3400
防御力:1500
敏捷力:5200
体力:無制限(転生特典)
精神力:無制限(転生特典)
器用力:無制限(転生特典)
知力:無制限(転生特典)
幸運値:無制限(転生特典)
経験値:1/303
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獲得値:11550/15150
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取得法:スキル取得は10ポイント消費
熟練度上昇は10ポイント消費
スキル熟練度は全て10で最大
スキル統合は50ポイント消費
未取得スキルの自動統合も可能
ポイント消費は統合のみとなる
熟練度上昇のポイント消費不要
耐性取得は30ポイント消費
無効取得は50ポイント消費
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取得可:剣術、双剣術、盾術、掘削術…
統合可:全属性、魔眼、時空術、暗殺術
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本来ならば絶対に現れない鑑定結果が事細かく記された。
詳細は先の生で通った勇者学園で習った
私だけが使えるイメージに異世界言語を当てはめた鍵言でもある。ステータスという鍵言は私なりに付けた鍵言だが本来は別の鍵言が付いていたりする。発音が難しいから理解し易い単語に書き換えただけ、なんだけどね。
「転生特典様々か。異世界からの転生者にのみ与えられる特殊な特典、スキルも経験値と共に得られる獲得値から新規習得が可能だし、余りまくった獲得値で習得可能なスキル群も無駄に多いね」
それでもこれに気づいたのは勇者学園に通ってからだ。転生直後は右も左も分からないまま街に逃げ延びて孤児院に強制収容されたから。
「改めて気づいたけど誕生日は今日か。というより再誕して森の中に放り出されたと見るのが正しいかな? 先の転生でも12歳の男として森の中に落とされたようなものだし。赤子から親を得る方法を採らない理由は不明だけど…」
単に時刻を確認しただけなのに予想外の情報まで得てしまい困惑した。それでも転生直後よりは世界の情報を得ているので救いではある。
「3度目の人生だし自分なりに楽しむのもアリかな? 今の段階で街に近付くことは出来るけど、しばらく様子見かな。成人の15歳は過ぎているけど身寄りが無いままなのは確かだし」
下手を打つと孤児院に放り込まれてしまう。
成人後でも洗礼という不要な名付けを行われて可能ならば勇者候補で学園に放り込まれる。
「いや、酷い手段そのものだね。本人の自由意思を無視するから。平民は奴隷と紙一重だよ」
勇者候補は魔力が1000以上ある事。
生まれながらにギフトと職業を得ている事。
スキルに多属性が含まれる事の3点が重要視される。従来の洗礼では成人式と同時に名前と職業とギフトが得られるらしいけど。
「ギフトと職業だけでは選ばれないから鑑定偽装で多属性とMPだけ削って良かった〜!」
拒否すれば鉱山奴隷にすると言われたら。
これが女の子なら性奴隷扱いだったけど。
それがあったから異世界情報を得るために必要なことと諦めて首を縦に振った。
お陰でステータスの開き方を知り、最初からあった多属性スキルを使い熟すまでになった。
残りの光属性だけは聖女と神官と筆頭勇者にのみ与えられる神聖属性なのでモブ勇者の私では使えるような代物ではなかった。
そうして鑑定結果を消そうとした時、
「ん? 統合可? ぜ、全属性!?」
スクロール下の閉じるボタン前で目が点になった。
♢ ♢ ♢
《あとがき》
思い出して途方に暮れる元勇者。
きょとんと立ちっぱなしだけど。
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