第13話 プレゼント
4月26日土曜日、天気は快晴。
萌歌は無事に普通二輪免許を取得して、晴れてライダーの仲間入りを果たした。
教習からも解放されて、これでようやく仕事に専念ができる。
今日は数百メートル先の近所の高齢の女性が乗る90ccのスクーターの洗車と艶出し作業を任されている。
働き始めて1ヶ月くらい経つが、萌歌の仕事は雑用とバイクの洗車及び磨き作業がメインだ。
3ヶ月間は試用期間の為、毎日のようにバイクを磨いてばかりいる。
しかし、掃除や物を綺麗にするということが好きな萌歌は磨き作業も非常に丁寧で磨きによるキズもほぼ作らないので、わざわざ洗車作業だけ頼みに来る常連客もいるくらいだった。
「ふぅ、こんなもんかな」
萌歌はスクーターの洗車作業を終えると、オーナーの高齢女性の家までバイクを届けた。
徒歩でバイク屋まで戻ってきた、さっきまで店の外になかったピカピカの1台のバイクを見て驚いた。
「え?これって…」
そこにあったのは以前に萌歌が店内で見たエイプ100スペシャルだった。
萌歌は、このバイクをどうするのか幸助に聞いてみると幸助は微笑みながら萌歌に言った。
「これは俺からの免許取得祝いのプレゼントだよ、お金はいらないし自賠責保険も任意保険も全て済んでいるから今すぐ乗れるよ」
夢のようだった、密かに乗ってみたいと思っていたバイクが既に乗れる状態で目の前にある。
自賠責保険や任意保険に関しては幸助が負担してくれることになっており、まだ収入がなくて貯金も祖父が残した僅かなお金しかない萌歌には助かる。
同時にそこまでしてもらって申し訳ない気持ちもあるが…
「本当に私が乗っていいんですか?…」
萌歌が申し訳無さそうに言うと幸助が言った。
「こんなど田舎で移動手段が無いなんて不便だろ?せっかく免許取ったんだしこのエイプは萌歌ちゃんにやるよ!大事に乗ってな!…もう昼時か、早速これで昼飯でも食ってきなよ」
幸助はそう言うと、昼飯代で2000円を持たせてくれた。
各務原夫妻には、一人娘がいたのだが病弱だった娘は僅か4歳で短い生涯を終えてしまった…
生きていたら萌歌と同い年だったいう。
亡くなった娘と同い年なだけに、幸助も萌歌にはいろいろしてあげたくなってしまうのだろう。
「本当に…本当にありがとうございます」
萌歌は何度も頭を下げて礼を言うと、エイプの近くにいくとシートに手をあてた。
「これからよろしくね」
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