第12話 おめでとう
4月25日の金曜日。
雲ひとつない快晴の中、萌歌は涼子に送迎してもらい浜松市にある西部運転免許センターに来ていた。
昨日の卒検ではスラローム、一本橋、S字クランク、急制動、坂道発進の課題項目を練習の時より好成績を収めて危なげなく見事に合格した。
残すところは、免許センターで行われる学科試験のみだが元々学生の頃から勉強の飲み込みが早く比較的優等生だった萌歌にとっては学科試験は朝飯前のようなもので、こちらの方もあっさり合格して晴れて免許交付となった。
現在、萌歌は免許証の写真撮影と免許証作成が行われる前の休憩時間で自販機で買った静岡茶を飲みながらベンチに座っていた。
涼子に合格したことを伝えようと思い、免許センター内の公衆電話を探した。
以前に説明したかもしれないが、実は萌歌はこの令和のご時世にスマホを持っておらず出先では公衆電話しか連絡手段がない。
免許センターの入口付近に公衆電話を見つけると、涼子から事前に聞いておいた携帯番号にかけた。
「もしもし、涼子さん?無事合格しました!あとは交付されるのを待つだけです」
萌歌が合格したことを伝えると『よかったわね!おめでとう』と祝福の言葉をくれた。
萌歌は休憩時間が残り僅かだったのでおおよその免許交付が終わる時間を伝えると、伝えた時間くらいになったら免許センターに着くようにすると涼子に言われて電話を切った。
萌歌は学科試験を受けた教室に戻ると、自分の席について係の人が来るのを待っていた。
しばらくすると係の人がやってきて本日の合格者の写真撮影を終えると、あとは免許証が完成するのを待つのみ。
その間、警察官から安全協会やら交通事故に関する眠くなるような長い話を聞かされて朝が早かったであろう受験者にはウトウトしてる者が何人もいた。
警察官の話が終わる頃に、新しい免許証を持った別の係の人がやってきて順番に名前を呼ばれて免許交付となりその時点で解散となる。
「轟さん、轟 萌歌さん!」
大体10人目くらいだろうか?
萌歌の名前が呼ばれて「はい」と返事をして警察官の元へ行くと緑帯の初回の免許証を受け取った。
最初の有効期限は3年で誕生日の1ヶ月後の5月23日まで有効となる。
写真の方もわりとうまく撮れていて、いかにも犯罪者風の写真にならなくてホッとした。
免許区分の所を確認すると普通自動二輪を表す「普自二」の文字が刻まれていた。
萌歌は新しい免許証を財布にしまうと、足早に免許センターの外に出ると入口付近で涼子が待っていた。
「萌歌ちゃん、お疲れ様!」
涼子が写真は綺麗に撮れたか?と聞いてきたので、免許証を見せると「なかなかよく撮れてるじゃない!」とまるで自分の免許証のように喜んでいる。
緊張がほぐれたのか萌歌のお腹の虫が鳴った。
「合格祝いに何か食べて行こうか!今日は私の奢りよ」
涼子は何を食べたいか萌歌に聞くと「浜松餃子が食べたいです」と言うので、浜松餃子が食べられるお店に向かった。
祝い事で奢ってもらうのは、祖父の宗次郎が亡くなって以来初めてだった。
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