第11話 コース周回練習とみきわめ
季節は4月中旬になり教習所の周りの桜も散り始めていた頃、萌歌は今日も教習に励んでいた。
スラロームや一本橋に加えてS字クランク、急制動、坂道発進などの課題項目もそれなりにできるようになってきた頃だった。
最初の頃は、S字クランクでは低速時の車体のコントロールが上手くできずに手だけで曲がろうとして曲がれずに脱輪したり転倒ばかりで散々だったし、急制動では速度を40キロキープ出来ずにオーバースピードからの急停止をしてブレーキのかけすぎで派手に転倒して怪我をしそうになったりした。
坂道発進では、半クラッチになる前に後輪ブレーキを解除してしまい車体が後退して慌ててしまってエンスト連発していたが、今ではようやくコツがわかってきた。
「萌歌くんもだいぶサマになってきたな、今日から卒検のコースを実際に走るぞ。コースはAコースとBコースの2種類だ!しっかり覚えるように」
佐倉教官はそう言うと、AコースとBコースで走るコースを矢印でなぞられた紙を萌歌に渡した。
ちなみに学科の方は、効果テストをやってみたら余裕の満点だったのでコチラの方は特に心配はなさそう。
「よし、今日はとりあえずAコースだ!1周だけ私が先導するが2周目からは1人で走りなさい」
佐倉教官はそう言うと発着所から先にスタートした、萌歌もCBR400Kで佐倉教官の手順を真似て発進してついていく。
外周を1周するとスラロームに向かった、佐倉教官はこれが本当のスラロームのやり方だと言わんばかりに惚れ惚れするような見事なバンク角で通過した。
タイムにすると4.8秒くらいだろうか?これでもまだ余裕を持って通過してるみたいだから恐ろしい…
流石は指導員の競技大会でスラローム全国1位なだけある。
萌歌も後に続いてスラロームを通過したが、さすがに佐倉教官ほどの速度で通過するのは無理だが6.7秒と減点無しの中々の好タイムだ。
最初の頃はパイロンに当てまくりだったが、佐倉教官の指導により見違える程成長した。
続いては一本橋だが、佐倉教官はもはや停止してるのではないか?というくらいの低速で車体をコントロールさせて1分以上かけて通過してみせた、凄い…
続いては萌歌だが、レベルの違いを見せつけられながらも15秒で通過するという好タイムを出している。
先に通過してタイムを計っていた佐倉教官は、思わず拍手を送った。
「萌歌くん、素晴らしいよ!スラロームと一本橋共に文句なしのタイムだ!腕を上げたな!」
佐倉教官と比べてしまうと全然大したことないと思うかもしれないが、実は萌歌のスラローム6.7秒と一本橋15秒は大型二輪の指定タイムでクリアしており普通二輪でこのタイムは文句のつけようのないタイムなのだ。
「ありがとうございます、佐倉教官の指導のおかげです」
萌歌は自分自身もここまで乗れるようになるとは思わなかったので素直に嬉しかった。
スラロームと一本橋を終えると、再び佐倉教官が先導してS字クランクに向かった。
最初は脱輪やパイロンにぶつけてばかりだったが、今ではスムーズに通過できるようになった。
S字クランクを通過すると坂道発進のポイントへ向かった。
今まで感覚が掴めなかった坂道発進も後退せずに発進出来るようになり不安要素はなくなった。
最後は少しトラウマがあった急制動。
最初の頃は、メーターを確認する余裕もなくギアを素早くシフトアップするのが苦手だった萌歌は3速まで上げられずに停止線を通過してしまったりブレーキの加減がわからず転倒ばかりだったが、今では素早くスムーズにシフトアップして確実に停止線で停まれるようになった。
ミスすることもなく発着所に戻ってきた萌歌と先導していた佐倉教官は、バイクを一旦停車させると佐倉教官は萌歌に指示を出した。
「よし、もう私が萌歌くんに教えることはないな!今の萌歌くんなら十分合格圏内の技術を持っている、自信を持ちなさい。さぁ、2周目は1人でコース周回に行ってくるんだ」
佐倉教官はそう言うと、自分が指導に使っているCBR400Kを退けると萌歌が発進しやすいように道をあけた。
萌歌は2周目も自分のペースで走り終えると、3周目はBコースを走って今日の教習も終わった。
「萌歌くん、お疲れ様!これで教習課程は全て修了だ!萌歌くんは4月23日が16歳の誕生日だったな、卒検を予約できる日は誕生日の23日からだから注意しなさい」
佐倉教官は教習課程を全て修了したみきわめのハンコが押された教習手帳と卒検予約用紙を萌歌に渡すと「卒検、健闘を祈るよ」と言って指導員室の方へ歩いていった。
萌歌は事務の受付の所で23日で予約しようとしたが、あいにくその日は教習所が休業日で渋々24日に予約を入れた。
「よし、とりあえず卒検のことを店長に伝えに行ってから帰ろう」
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