第2話
「どうかしました?」
アフロ?モジャモジャ頭の背の高い男の人が車を降りて私達のもとへ。
誰だか知らないけど、あなたは救世主っ!
「た、助けて…。」
「関係ない奴はすっこんでろ。」
ガタイのいい男がアフロの人に掴みかかろうとする。刹那、
「…ぃっ!?」
一回転して倒された。
「大丈夫ですか?あ、これは痛そうだ。」
アフロの人は私の膝から滲む血を見て首を傾げた。
「被害届だします?えーと…暴行罪で、現行犯逮捕ってところか。」
そう呟いて、アフロの人は懐から警察手帳を出し、私たちに見せた。
「そ、その女が勝手に転んだだけだ!」
「刑事か、まずいな。一旦引くぞ。」
男達が後退りする。
「逃げると公務執行妨害って罪も追加されるんだが…。」
「被害届は出しません!」
時田さんがアフロの刑事さんを止めた。
「いいんですか?」
「…私達は週間saziの記者です。私は妊婦連続殺人事件を取材している時田と言います。」
「…なるほど。事件を追いかけていたら、追いかけられた、と。お話、詳しく伺えますか?」
男達は乗ってきた車に乗り込み、去って行った。忘れない内にナンバーを記録。
「おーい、なにごとだい?」
釣り人の格好をしたオジサンが今頃になってヨタヨタと現れた。声を聞かせてくれただけでもありがたかったから、さらりと事情を話しお礼を言った。
私達は刑事さんの車に乗り込んだ。
「土居さん、来て早々すみません。」
「こういう事は以前も?」
時田さんが持っていた絆創膏を私の膝に貼りながら首を横に振った。
「こんなふうに追いかけられたのは初めてです。」
「『何か見た』んですね?」
「はい…。三人目の被害者のご主人に、鈴里産婦人科医院で取材をして外に出た時でした。外にスーツの男性がいて、電話をしていたんです。てっきり業者の方かと思ったんですが…言葉が中国語のようで。」
中国語、と聞いて私は編集長が言っていた『胎児を薬にした国』という話を思い出した。
「その時こっそり写真を…」
「え、そんな危険じゃないですか!?」
私はびっくりして思わず大きな声を出してしまった。
「何かに繋がればと思って…。その後からです、誰かにつけられている気配を感じるようになって」
「それが原因ですよ!ほんと、何やってるんですか?大体時田さんはいつも無茶な取材して…」
「無茶でした?」
時田さんはどこが?と言わんばかりに首を傾げた。
「無茶ですよ。大体産婦人科医なんて、今回の事件で一番怪しいじゃないですか!?」
「えぇ、だから私もそう思って…。」
「それで、取材してみての貴女の見解は?」
刑事さんが静かに尋ねる。髪型に反して、淡々とした落ち着いた印象だ。
「限りなく怪しかったです。感情の起伏が激しいのは…奥さんを亡くされたからだったかもしれませんが。時折…その、冷たい表情になって、底知れない闇を抱えているような、そんな印象でした。」
「なるほど。会話の内容は記録されていますか?」
「はい。」
「それらをこちらにお渡しください。そして我々の保護を受けていただきます。」
私はその言葉を聞いて安心した。しかし時田さんは
「結構です。」
「は?」
「私は真実を明らかにしたい、自分で納得いくまで取材したいと思っています。」
え、時田さん。あんなに危ない目にあったのに?
「迷惑です。」
刑事さんがサラりと言った。
「そういう記者魂って言うんですか?私の友人にもいるのですが、正直言って迷惑なんですよ。捜査の邪魔だ。今日だって出来れば彼らの前に顔を晒したくなかったんですがね…。」
酷っ!なんか言い方酷っ…!友人って編集長のことだよね?
「…もしかして、小野田、さん?」
私は思いきって聞いてみた。
「…なんで俺の名前を?あー、柚木、あいつsaziの編集長だった。」
小野田刑事はそう言いながら眉をしかめた。
「編集長に言われたんです。連絡しておくから一度会っておけって。」
「っあーーー。そういや…。」
バツが悪そうに頭を抱える。
「お知り合いだったんですか?」
「同級生だそうですよ。」
「忙しさにかまけて折り返すのを忘れていました。どうせまた情報を横流ししろと言われるかと。勿論そんな事、したことはありませんが。」
小野田刑事はそう言うとニヒルに苦笑した。
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