第9話-B 日常という光と破滅という闇
二人一組を作れと言われた直後に名前を呼ばれたので(モテ期到来!?)と思いなから振り返ると……。
「一緒にしてくれる?話したいこともあるし……」
そこにいたのは柚来さんでした。……なるほど、それなら話しかけてきたのも納得です。
これはここ最近観察してわかったことですが、前まで私は柚来さんは周りに話しかけて皆から慕われているというイメージでした。実際そういう部分もあります。
しかし、特に仲良くしている相手が二人ほどいたんです。つまり柚来さんは三人組。それなら柚来さんが私に話しかけても何の不都合もないというわけです。
まぁ学校にいるときは話しかけない約束だった気がしますけど……二人一組という状況なら優しい陽キャがぼっち陰キャに同情して誘ったと思われるでしょう。
話したいこともあると言っていましたけど……多分魔法少女のことですね。
「……ちょっと皆から離れたところらへんに行ってもいい?」
「う、うん、賛成」
「えと、それで、話したい事というのは?」
「あのね、私――」
一体何を言われるのでしょうか。私たちの共通点は魔法少女ぐらいしか無いのでそのことだとは思いますけど……。
「真城さんの事なんにも知らなかったなーって。だから、真城さんのこと聞きたいの」
「……へ?」
その時、サッカーボールがこちら飛んできました。あー……柚来さんから見てこちら方面といったほうが正しいですね。
角度で表すなら45度ぐらい。その角度分だけボールの方向がズレてました。
ボールがとんでもない方向に飛んでった事と思いもしなかった質問をされた事で一瞬頭が真っ白になりましたが、なんとかボールを全力で追いかけて足に収めました。頑張りました私。
「ボールごめん!私運動苦手でさ……。
えっと、それでね。別に真城さんのこと嫌いとかじゃないんだけど、今はほら……ちょっと距離あるじゃない?」
ちょっとどころでは無い気がするんですが。物理的にも、なかよし度的にも。結構距離あると思いますけど。
「だから、互いのことをもっと知って、いつかは
「……」
確かに今の関係性と納得はしましたが、嬉々さんのあの話を聞いたらそっちの方がいい気がしてきました。
嬉々さんのあの話……。試練を達成したあとにまた色々と魔法少女に関して教えてくれた話です。
たしか魔法少女は心が原動力なので、メンタルに大きく左右されるとかなんとか……。
今の関係性のままだとメンタルが……あ、いえ。もちろん仲良しですけど?まぁもっと仲良くなったほうがメンタル良くなると思いますし、ええ!別に私と柚来さんが仲悪いとかそういうことは無いですよ!
「じゃ、じゃあ私は何から言えば……」
ボールを繰り返します。
流石私。見事柚来さんの足元へと転がりました。柚来さんも「凄い!」と褒めてくれました。
「じゃあ……好きな食べ物とか?」
言葉に合わせてボールが蹴られました。
「嬉々さんが作った唐揚げと、チョコレート」
キャッチ&リリース。
「私もチョコレート好きだなー。じゃあさじゃあさ、休みの日は何してるの?」
返ってくる。
「ゲームしたり、走ったり?」
「ランニングってこと?」
「ランニング……うん、ランニング」
ボールを更に返す。
「私も少しぐらい運動したらマシになるかなぁ。あ、どんな曲が好き?好きなアーティストとかいる?」
「走ってる時にモルゲン娘。とか聞いてる」
「モル娘って一世代前だからわかんない……ごめんね」
そりゃあ世代が違うんですからわからなくて当然です。これは柚来さんは何も悪くありません。
「じゃあ〜!」
こうしてテキトーに話しながらパスをして体育は終わりました。この日記書いてる最中に気づいたんですが、柚来さんのこと何も聞けてないですね。
ちなみに体育の後はホームルームをして、返ってランニングして、お風呂入って晩御飯食べて寝ました。
珍しく柚来さんと話したせいか、気疲れしました。でも……悪くない1日でした。
※この日記は嬉々さんへの提出用として用意されたものでしたが、真城の言葉遣いが大変に悪かったので嬉々さんと夢々さんにより加筆修正されています。
同時刻。鬼塚市南部・鬼塚山の洞穴にて。
「で、
左の角が折れた鬼の少年……
「……いや何、貴様の力であやつらを仲違いさせたじゃろ?だからあのまま喧嘩別れするか、それとも強い友情を育むかを様子見しておったが……まさか、仲違いしたまま共闘し始めるとは思わなくてのう。
これからどうやってあやつらを壊すか考えておったんじゃ」
炎禍と呼ばれた鬼は卑しく笑う。
「……そ。もし時間かけるようなら僕が先にもらっちゃ―――っは!」
響の喉には五本の指が突き刺さっていた。その指の元には鬼のような形相をした炎禍がいた。
「何年も封印されて妾の性格も忘れたか?仲違いの件は大目に見てやったが……次同じことしたら」
そこまで言うと炎禍は指を首から引っこ抜き、一歩下がる。そして、今度は仏のような満面の笑みで、慈悲あふれる声で、言い放つ。
「次同じことしたら――――ぶち殺すぞ?」
「……はは、ごめんごめん」
謝罪の口調こそ軽いが、響の顔には余裕の二文字は無かった。
(まさかそこまで魔法少女に惚れ込んでたとはね……。まぁ復活後初めての玩具だし、あり得る話か)
首の傷が塞がり余裕が生まれたのか、響はニヒルな笑顔を浮かべて炎禍を見つめた。
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次回へ続く
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