第12話 まだ決定とは言ってません!

 「え、えっと…まだ付き合ってもいないのに同棲とかはちょっと…」

「いや、俺はプロポーズのつもりですよ?」

(やっぱりそっち!?)

珍しくうろたえる玉城。そこに、

「これがプロポーズですか…初めて見ました」

「ええのう…若いってええのう…」

(そこの二人うるさい!)

玉城がそう思っていると、

 「玉城さん、返事は首都に帰ってからでもいいですから」

木守にそう言われたことで、少し猶予が出来てホッとしたのもつかの間、

 「そういえば…帰りはどうしよう!?」

 はっきり言って、こんなに大きな卵を抱えたままでは思いっきり目立ってしまう。

「卵は肌身離さず抱えていないと産まれないそうですじゃ」

「あら、そうなんですか?」

そう言われたベルトリクスがさらに大事そうに卵を抱える。

「肌身離さず…」

神父にそう言われたのでキャリーケースに入れて運ぶ案はすぐに取り消した。

 「赤ん坊の抱っこひもとかでくるんで…駄目だ目立つ!」

「あのー、玉城さん」

「おんぶして…それも目立つ!」

「もしも~し」

「いっそのこと服の中に入れて妊婦みたいに…」

「玉城さーん!」

「何よさっきから!」

 「首都まで木守所有の客船に乗って移動はどうですか?」

「…えっ!? 所有の…客船!?」

ビックリした表情で木守を見る玉城。

「はい。実は今回の旅、あちこちで木守や他のコウモリ族も動いてくれていたんです。まあ客船は政府が用意してくれるんですが、船長やスタッフは一族が担当します」

「ひょっとして…漁港で話していた人とかも一族?」

「その通り!」

 時々見張られているような気がしていたのはそのためか。と、玉城は納得した。

 「元々予定していた西ノ州のフェリー乗り場に明日客船が来るそうなので、今日はこの島に一泊して明日朝イチで西ノ州に上陸すれば間に合うかと」

「それじゃあ今日はうちに泊まりますか?」

神父が宿泊するか訪ねると、

「そうですねえ…とりあえず今こっちに来る人達に結崎さんを渡してからそのように伝えますか」

 いつもよりもテキパキと仕事をこなす木守。

その様子を見て、

(ちょっとカッコ良い…かも)

「ベルトリクス様、後ろで心境をアフレコしないでください」

「え、ダメでしたか?」

 内心ちょっと心がぐらついていたので、図星を指された気持ちになる玉城だった。


 「頭領! ご無事でしたか?」

「ケガとか無いから大丈夫です。

じゃあ手筈通りにこの人をお願いします」

「はっ!」

コウモリ族の者達が結崎を動けないように担架に固定して運んでいく。

 作業中、

「あれが天使…可愛いな」

や、

「あの人が頭領の選んだ? 頭領、キツめな人が好みなのか?」

といったように玉城を見てヒソヒソ話をしているのが聞こえてくる。

 (なんか…結婚に向けて外堀そとぼり埋められている気分…)

ほぼ結婚する事が決定事項のような会話をされているので、断りにくくなっている雰囲気を玉城が感じていると、

 「…男女一緒で一部屋用意した方が良いかのう…」

と神父まで言い出したので、

「ぜっったい別々の部屋にしてください!」

と、玉城は神父に詰め寄った。

 「玉城さん…そこまで言わなくても…」

悲しそうな声で木守が呟く。

「頭領、フラれた?」

「フラれたのか?」

ヒソヒソ話すコウモリ族の人々。

(うう…気まずい…)

 玉城が困った顔をしている所に神父が、

「そういえばこの教会でプロポーズをすると成功率100%という言い伝えが」

「まあ、そうなんですか?」

神父とすっかり仲良くなったベルトリクスが興味津々という感じで話を聞いている。

 (何故そこでそういう話をするのー!?)

木守が悪い人ではないのを知っているだけに、数日間悩む事になる玉城であった。





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