第8話 旅の情緒を味わいたいのに…
西ノ
「ここ、坂が多いんですねえ…」
「高低差のある土地と異国情緒ある街並みが有名なんですよ」
「この街に住むのは…移動手段が…色々無いと…大変ですね…」
「木守さん一人に荷物を持たせて大丈夫でしょうか…」
「荷物といってもベルトリクス様のだけなんで大丈夫ですよ」
最西端の諸島に行くには船に乗って行かなければならないが、一番早い乗船時間が明日なので、今日はこの街を観光しつつ一泊する事になったのだ。
「せ、せめてこの荷物だけでもホテルに預けておいても良かったんじゃ…ない…ですか?」
「それはダメです!」
ベルトリクスが珍しく大きな声を出した。
玉城も木守もビックリしてベルトリクスを見る。
「あ、え、と、だ、大事な物が入っているのでダメです!」
「ではしょうがないですね。木守、頑張って!」
「そんな殺生な~」
坂の上で木守の悲鳴がこだました。
「先輩、数名こちらを監視しているのがいるようですが」
「木守も気付いたか」
ベルトリクスに気付かれないように小声で会話する。
どうやら何か目的があるのかつけてきている者達がいるようだ。
「どうします? 撒きますか?」
「撒くにしても一人だけが相手をする事になるから…」
そう言うと玉城はどこかへ電話をかける。
「先輩?」
「こっちの警察に後輩が赴任してるから、ベルトリクス様をその人に一旦預かってもらって対処しよう。
その人は元SPで信用出来る人柄だから大丈夫だろう」
どうやらその人には話がついたらしく、すぐにセダンタイプの車が到着し、女性が降りてきた。
「久しぶりです玉城先輩!」
「
「ベルトリクスさん…ですね。先輩の話にあった通りキレイですね! どうぞよろしくお願いします!」
「よ、よろしくお願いいたします」
結崎は少し押しが強めなタイプのようで、ベルトリクスは少し腰が引けていた。
「では、こちらの車で案内します。どうぞお乗りください」
そう言いながら後ろのドアを空けて乗るように促す。一緒にベルトリクスの荷物も車に積んだ。
「じゃあ頼むね」
「了解です!」
敬礼した後、車でベルトリクスと共に走り去っていった。
「さて、こちらもさっさと終わらせますか先輩!」
「そうだな…」
そう言いながら玉城と木守は隠し持っていた警棒を伸ばし臨戦態勢を取る。
「気付いていたか…」
ざっと10人位だろうか。物陰から屈強そうな男達が出てきた。中には熊の獣人やライオンの獣人もいる。
「おい、一緒にいた帽子を被っていた天上人はどこだ?!」
「そんなのいたっけ?」
「俺らは普通に観光していただけですよねえ先輩」
玉城と木守がとぼけると、
「ふざけるな!」
男達が襲いかかってきた!
相手の攻撃を避けながら、警棒で叩いたりパンチを受け流したりして気絶させていく。
熊やライオンも強いのだが、攻撃パターンが猪突猛進なので難なくかわせた。
「こいつら…強い!」
何度も襲いかかってくるのでさすがに疲れたのか、木守が、
「先輩、翼出しちゃダメですか?」
「服が破けるからダメ!」
玉城にあっさり却下される。
「捕まえ」
「させるか!」
リーダー格の男に襲われそうになった玉城。警棒の取っ手に付いているボタンを押しながら男に警棒の先を当てる。
ビビビッ!
警棒から電気が走り、少しうめいて男は倒れた。
「うわ~、痛そう…。先輩、スタンガン仕様ですか?」
「正当防衛だ。問題ない」
胸を張って玉城が答える。
大体の相手を倒してから一息ついて、玉城は結崎に連絡した。が──
「電話が…繋がらない…!?」
慌てて所属先の警察署に連絡するが、
「結崎ですか? 昨日付けで退職してますよ」
と、言われた。
一体彼女達は何処へ行ったのか?
次回へ続く!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます