第6話 次に廻るは朱き鳥居

 食事を終えて玉城とベルトリクスが部屋に戻ってくると、ちょうど木守も食べ終わったらしく、袋に空の弁当箱を入れている所だった。

 「あ、お帰りなさ~い」

ベルトリクス達に気付き挨拶する。

「お留守番ご苦労様。何か変わった事は無かった?」

「な~んにも」

いつもの飄々ひょうひょうとした口調で答える。

 「先輩、いつも通り2時間交代で見張りですか? 最初は俺からにしますか?」

「いいの? じゃあ頼もうかな」

「では私は」

「ベルトリクス様は先にお風呂に入ってお休みになられて下さい。明日も移動がありますので」

 そう玉城に言われたので大人しく従うベルトリクス。

 「木守、覗くなよ」

「しないですよ! 第一そんな事したらクビになっちゃうじゃないですか!」

 そんなやり取りをしている間にベルトリクスがお風呂から出てきた。

「…えっ? 早っ!」

お風呂から早く出る事を『からすの行水』という言葉で表すが、まさにその通りの早さだった。


 ホテルでも良い部屋を選んだので主賓用ベッドルームと客人用ベッドルームがそれぞれ用意してあり、ベルトリクスと玉城が利用する事にした。

 「じゃあ、俺はソファーで」

木守はそう言うと毛布を持ってきて見張り番を始める。

「じゃあ、時間になったら交代するから起こして」

「了解!」

ビシッと敬礼をする木守。

 しかし、玉城が起きたのは朝になってからだった。

 「木守ー! 何で起こしてくれなかったの?!」

上着は脱いでいたものの、ブラウスにスカート姿のまま寝ていたので慌てて起き、木守に問うが、

「先輩疲れているだろうと思って一晩寝ずの番してました。何にも無かったですよ~」

 ハアッ…と玉城がため息をついた後、

「私が元気になっても相棒のアンタが倒れちゃ元も子も無いでしょうが…」

と、呟いた後、

「今日はあの鳥居の島に寄る予定だからね。

所々で休息取る事。分かったわね!」

「はい!」

 木守が返事をした時、のんびりとベルトリクスが目をこすりながら起きてきた。

「おはようございます~」

「おはようございますベルトリクス様。本日はご飯の後、西へ出発します」

「あら、出発が早いんですね」

 何か旅のサプライズプランがあるのかニコニコしている玉城。

 朝御飯を部屋に用意してもらい三人で食べた後、荷物をまとめて出発した。


 古都の駅から新幹線に乗り、また西へ向かう。

その間木守は玉城に言われた通り眠っていた。

 途中で木守は玉城に起こされる。

「ふあ…もう着いたんですか?」

「今日は途中下車して寄る場所があるから。ほら、降りるよ」

 グイグイ引っ張られながら降りる木守。

「玉城さん、ここはどこですか?」

一緒に降りたベルトリクスが聞いてくる。

 「ここの駅から少し移動した先にお薦めのとっても良い景色の場所があるんですよ」

そう言いながら駅からタクシーで目的地に向かう。

 「「…船?」」

観光船乗り場で今度はとある島へ向かうのだそうだ。

 「着きました! ここが神ノ島と呼ばれている島です。あちらの海に浮かんでいる様に見える朱い鳥居が有名なんですよ」

そう言いながら鳥居を説明する玉城。

 だが、それを見たベルトリクスは直立不動となり、なにやら小声で独り話し始める。

 「神…の島…お告げ通り…やらなきゃ…」

「ストーップ!」

そう言いながら木守はベルトリクスの視界を遮るようにつばの広い帽子を被せる。

「…?!」

ビックリして木守を見るベルトリクス。

 「ベルトリクス様、目的地じゃないですからここではダメですよ。そうだ! ここの島の名物はこのお饅頭とアナゴ飯だそうです。

お昼ご飯に食べましょ?」

 そう言いながらどこからか焼き饅頭を取り出しベルトリクスに薦める。

「ありが…とうございます…」

玉城に『食べていい?』と確認してあっという間に平らげた。

 「さあ、少し坂の上を行った所に美味しいアナゴ飯のお店があるそうなので行きましょう!」

「お前が仕切るな!」

 三人でワイワイ言いながらお店に向かうのだった。

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