第3話 頼りになる(か分からない)相棒

 タクシーで首都の中央駅セントラルステーションに向かい、駅員から手配していた切符を受け取る。

携帯端末からでも新幹線等に乗り降りは出来るが、あまり記録が残り足取りを掴まれる行為は避けたいのと、色々体験させて社会勉強をしたいとのベルトリクスの希望があったための配慮はいりょでもあった。

 「これが…駅…」

広さと人の多さに圧倒されたのかポカーンとした表情のベルトリクス。

「ベルトリクス様、こちらから新幹線に乗りますので」

手を繋ぎ、はぐれない様にして改札まで向かう。

 昔と違い切符をかざすだけで改札口を通れる様になったのだが…、

「ひゃあっ! と、通れません!」

ワンテンポ遅れたのかベルトリクスが改札に引っ掛かってしまった。

「ベルトリクス様、こちらをそこの光っている所へかざしてください」

駅員と玉城に教えてもらいながら何とか通るベルトリクス。

 「エスカレーターに乗りますが、足元お気を付けてください」

「…の、乗るタイミングが分かりません」

 すぐにエレベーターに方向転換して新幹線ホームへ向かった。

こんな調子だが中央駅からの始発なのと時間に余裕を持って動いたのでお弁当を購入して新幹線内で食べる事にする。

 「ベルトリクス様、どれがよろしいですか?」

「これが…駅弁…」

注文用タブレットディスプレイをじっと見て『あれでもないこれでもない』と迷っているベルトリクス。

「味の好みは? 軽く食べたいのでしたらこちらのサンドイッチセットもお薦めですが」

「これがサンドイッチ…」

食べた事は無いが、話には聞いていたのだろう。他の弁当よりも目を輝かせている。

「すいません、これを二つお願いします」

「はいよっ!」

恰幅かっぷくの良い店員が弁当を入れた袋を玉城に手渡す。袋の中には弁当とペットボトルのジュースも入っていた。

「こちらは頼んでいませんが…」

ジュースを帰そうとすると、

 「いいんだよ。それよりも美人さん二人で旅行かい? 楽しんできてね!」

ジュースを押し返されてしまい、お礼を言いながら受け取る。

 座席に着き、先程の弁当を取り出すがジュースには手を付けず別のカバンにしまう。

「ジュース、飲まないんですか?」

「何か毒物でも入っていると危険ですので人からもらった物は飲んだり食べたりしない様にしているんです。一種の職業病ですね…」

そう言った所で、

「…すいません今のは聞かなかった事にしてください」

 余計な事まで口に出してしまったと思い、発言を取り消す。

旅路という事もあり気が緩んでしまったのもあるのかもしれないが、今は仕事中だ。

改めて気を引き締めた。

 新幹線が出発する。速度もあってかあっという間にこの国で一番高い山のそばを通る。

「ベルトリクス様、こちらが国一番の高さの山です」

「…あっという間に過ぎてしまいましたね」

 移動日数を少なくしようとあまり停車駅が少ない新幹線を選んだため、風景を見るには向いていなかったようだ。

 「おやお嬢さん方、旅行ですか?」

ナンパだろうか、黒髪黒スーツ姿の男が話しかけてきた。

「ナンパお断り」

「そう言わないで、って痛い痛い!」

男が玉城の肩に手を出そうとしたが逆に腕をつかまれ間接を極められてしまう。

「痛い! 放して下さい先輩! ギブギブ!」

手を床にバンバン叩いてギブ宣言する男。

「…冗談にしては悪質だな」

 玉城に解放され、男は立ち上がりながら服のホコリを落としつつベルトリクスに挨拶する。

 「すいませんビックリさせちゃって。ボクがあなたを玉城先輩と一緒に守る先輩の相棒の木守こもりと申します。どうぞよろしく」

そう言いながら木守は元々の細目をさらに細め、笑顔をベルトリクスに見せるのだった。






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