第2話 『新幹線』とは何ですか?
「すっ、すいませんすいませんっ!」
ペコペコ謝るベルトリクス。
「…とりあえずここの外で行動する時は羽根と輪っかを
羽根などは仕舞えると聞いていたので、そうお願いした玉城。とにかくこのままでは目立ってしょうがないのも理由の一つではある。
輪っかの素材は分からないが、ソフトな触感なのでそんなには痛くない。
が、ぶつかるとちょっとだけうっとうしいな、と玉城はそう感じていた。
ベルトリクスが「ふんっ!」と気合いをいれると、シュッという音と共に羽根と輪っかが消えた。
「これで、よろしいですか?」
見た目だけでなく口調と仕草から上品な雰囲気は伝わってくる。『特別なキミ』という俗称はここからもきているのだろうか、と玉城は思った。
「では、改めて依頼を
玉城のこの言葉に、上司である藤枝はにこやかな顔になった。
「そうかそうか。引き受けてくれるか。君が引き受けてくれるなら私も安心するよ。
くれぐれも身元がバレないように気を付けてくれたまえ」
(さりげにプレッシャーをかけてくるなよ、この上司)
内心でそう思った玉城だったが、表情と言葉には出さない事にした。
一時間ほどして、あちこちに連絡を取り列車やホテルの予約を行う。
その際の避難ルートも同時に行い、プリントアウトして玉城自身のタブレット端末に保存していく。
「では部長、こちらが今回のプランとなっております。連絡は一時間ごと、そして何かあったらすぐにご連絡を入れる
「切符はどうするんだい?」
「すでに鉄道各社に予約手配済みですので駅で受け取れます。荷物は…」
「あの、これで間に合いますか?」
そう言いながらベアトリクスは大きなリュックを机に持ち上げた。意外と力持ちなのかもしれない。だが、人目を引いてしまうのは避けたい。
「…なにかキャリーバッグを手配してそちらに荷物を入れましょう」
か弱そうな上に綺麗な女性が大きなリュックを背負っていたらものすごく目立ってしまう。
なるべく目立たないようにしないと今回の旅行、もといプランが台無しになってしまうので他の部署に頼んでキャリーバッグを借りる事にした。
「この中からお好きな物をお選びくださいベルトリクス様」
同じタイプのキャリーバッグを何色か用意してもらったが、どれを選ぶかはベルトリクスに任せる。後から「これは嫌だ」と言われてしまわないための対策だったのだが、
「私、この色が良いです」
彼女が指を指したのは紺色のキャリーバッグだった。車輪が付いているのと坂道でもブレーキを掛けられる仕様になっていて運びやすくなっている。
「…本当にこれでよろしいですか?」
てっきりピンク色等の可愛らしい物を選ぶと思っていたのでちょっと驚いた。
「シックで良いなあ、と思ったのと空の色に似ているので」
普段彼女が住んでいるのは高いタワーのさらに超高層階。空よりも宇宙に近い高さなので紺色の方がよく見ている色なのかもしれない。
「では、これに荷物を入れ換えて早速出発しましょう。道中は私はツアーコンダクターとして振る舞いますので何でもご質問ください」
「分かりました。では…」
少し口ごもりながら最初にした質問は、
「新幹線とは、何ですか?」
ほぼタワーから降りてきた事が無いので地上の乗り物にも詳しくないのはしょうがない。
(そこからか…前途多難だな)
内心そう思いながら親切丁寧に教える玉城だった。
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