第38話:情報戦
神暦3103年王国暦255年7月19日12時:ジャクスティン視点
若いアルファが信じられないほど劣化していたが、外国も同じだった。
外国の王侯貴族が信じられないほど劣化していた。
最初の国だけではなく、我が国に侵攻しようとしていた全ての国が、自国民を殺して開戦理由をでっちあげようとしていたのだ。
セイント、オリビア、ジェネシス、エマ女王にロスリン伯爵などの古参の高位アルファ貴族が獅子奮迅の戦いをしてくれたお陰で、何とか未然に防げた。
防げただけでなく、証拠と証人を多数か確保できた。
「大陸連合魔道学院から各国に通達します。
この度の人狼国との戦争において、許し難い犯罪が行われました。
事もあろうに、侵攻を企てた各国が自国民を虐殺しようとしたのです。
自ら自国民を殺して人狼国の仕業に見せかけようとしたのです。
このような恥知らずな国は、学院はもちろん神が許すはずがありません。
必ず天罰が下りますんで、決して味方しないように」
俺様が命ずるまでもなく、大陸連合魔道学院の総長が大陸中に伝書を送った。
魔術による直接伝話ができる王家王国だけでなく、使い魔を使って有力貴族や組織団体にも通達を行った。
「教団としては、このような卑劣な行為を行った国の味方はできません」
「何を申している?!
事前に相談したではないか?!
獣と同じ人狼など、どのような手段を使ってでも滅ぼせと申したではないか!」
「どのような手段とは言いましたが、まさか自国民を殺すとは思いもしません。
人として許される範囲の、どのような手段でございます」
「屁理屈を申すな!
教会内の工作は任せろと賄賂を受け取ったのは枢機卿であろう!」
某国王と大陸有数の勢力を誇る教団幹部の醜い言い争い。
それを伝書魔術によって広めたのは大陸連合魔道学院だった。
支援金を打ち切ったばかりか、学院領に攻め込もうとした軍への牽制だった。
総長は俺様に脅かされて震えるだけの男ではない。
学院を守るために色々と準備をしていた。
各王家が内密に話をする場所や、有力団体の機密室に盗聴魔術を仕込んでいた。
だが総長の行為が逆効果になる国や組織があった。
多くの国はトカゲの尻尾切りをして切り抜けようとして。
学院への手出しを控えた。
だが自らの下劣な行いを公表された某国王と某枢機卿は暴挙に出た。
王国軍と聖堂騎士団と名乗る教団私兵が学院領に攻め込んだ。
しかしそれは自殺行為以外の何物でもなかった。
事前に国内侵攻を防いだ俺様と総長では立場が全く違う。
俺様が外国の首都を殲滅すればやり過ぎと言って責められる。
だが学院領内に攻め込まれた総長ならば、自衛のための反撃として許される。
学院は我が国への侵攻を迫る国々の手先となった若手教員を皆殺しにしている。
我が国への侵攻を迫る学生達を退学にして学院領から強制退去させている。
そこまでしている学院に手出しするなど、命知らず以外の何者でもない。
残った総長以下の理事や教授が、学院が秘匿していた禁呪を放った。
俺様は知っているが、かなりの量の魔力が必要な大規模魔術だ。
その分破壊力は絶大で、前世の原爆に匹敵する。
いや、込める魔力によっては戦略核爆弾を超える破壊力にもできる。
俺様ならばそれくらい簡単にできる。
核による放射能汚染はないが、魔力汚染は避けられない。
濃厚な魔力で人を殺してしまう魔境の奥深くと同じ環境になる。
爆発力から何とか生き残った人達も、魔力汚染で苦しみ死んでしまう。
最悪の場合は、人や外国人とは違うバケモノに変化してしまう。
そのような恐ろしい魔術だからこそ、禁じられ封じられたのだ。
俺様ですら自国民を害されない限り使うのを躊躇う禁呪だ。
それを総長は躊躇うことなく侵攻してくる軍と聖堂騎士団に放った。
「神を恐れる事なく民を害する卑怯下劣な輩に天罰が下った。
学院領に攻め込もうとする者には再び天罰が下る。
特に神を欺き悪逆非道に手を染めた王家や教団は絶対に許されない。
王都や教都に住む善良な民は急ぎ逃げよ。
今にも王都や教都に天罰が下るかもしれないぞ!」
総長の脅しは、禁呪を放って二軍合計二万の兵力を殲滅させた直後だけに、当該国だけでなく、我が国に侵攻を企てた全ての王家王国有力組織を震え上がらせた。
王家は民を見捨てて王城から逃げ出そうとした。
だがその混乱を突いて俺様が放っていた腐れ外道アルファが動いた。
俺様の命令通り王を始めとした王族を虐殺した。
我先に逃げ出そうとしていた国王達は隙だらけだった。
腐れ外道の低能力者とはいえアルファはアルファだ。
外国人とは比べ物にならない身体能力がある。
国王と主要な王位継承権者を皆殺しにされた国は大混乱した。
とても我が国への侵攻など続けられる状態ではない。
だが、俺様が腐れ外道アルファアに命じた事は取り消されない。
腐れ外道アルファ達は、自分達が捕まらないように虐殺を続ける。
我が国に侵攻する恐れのある軍や貴族、団体を無差別に襲い続ける。
我が国と和平交渉を行う事すらできない大混乱となった。
滅びかけているのは我が国に侵攻を企てた外国だけではない。
そんな国から事前に交渉を受けていた各教団も滅びかけていた。
教団トップは直接交渉していた幹部を切り捨てて生き延びようとした。
だが、トップの指示で交渉していた幹部が黙って殺されるはずもない。
生き延びるために自分の派閥を使って下剋上を企てる。
神を奉じる清廉潔白なはずの神官が、生き延びるために同じ神官と殺し合う。
だが教団内で生き残っても未来などない。
学院はもちろん、俺様が放った腐れ外道アルファが神官を皆殺しにしようとする。
そんな教団に帰依し続ける愚か者は極僅かで、多くの教団には滅びの道しかない。
「お爺様、僕お爺様のために頑張りました、ご褒美を下さい」
そう言って上目遣いに見上げて来る孫に寒気を覚える。
アルファの本性が強いままならフェロモンに狂っていたかもしれない。
だが今の俺様には前世の知識と記憶がある。
亜空間を使って何百年も研究開発をさせる事すらできる。
オメガのフェロモンを防ぐ消臭剤などとっくの昔に開発させている。
「そうか、分かった、ご褒美をくれてやろう。
俺様の離宮、先に公城の塔にあるハーレムに行って待て。
こまごまとした政務が片付いたら抱いてやる」
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