第37話:後の先
神暦3103年王国暦255年7月16日12時:ジャクスティン視点
俺様の事前調査は入念である。
外国人と全く変わらないベータを、全ての外国に何千何万と潜入させている。
彼らが外国人をパートナーとして連れ帰っても差別させない。
元外国人でも、我が国我が領地で生まれたベータと同じ権利を与える。
だから外国への潜入任務を志願するベータ男子に困る事はない。
人間のアルファの出生率が千分の一である事。
そのため多くのアルファが百人以上の女をハーレムに囲い込む。
つまり、我が国のベータ男子は結婚する女性がいない事になる。
どうしても妻が欲しいベータ男子は出身国を隠して外国に行く。
或いは国内で富を蓄えて外国の奴隷女性を買う。
度胸も能力も気概もないベータ男子は生涯独身で死んでいく。
そんな事もあって、とても正確な外国情報が国内に居ながらにして手に入る。
だから最初に我が国に攻め込んでくる愚かで猪突な国の予測はついていた。
俺様がどこで待ち伏せすべきかも分かっていたのだ。
外国人はその本性通り卑怯極まりない方法を使おうとした。
我が国との国境線の少し外側にある村。
自国の村を軍に襲撃させて、我が国に先制攻撃されたと偽装しようとした。
そんな卑怯で下劣な作戦を考える王の兵士が清廉潔白なはずがない。
村人を、自国民だから楽に殺してやろうとする配慮などない。
奪い犯し焼き払って我欲を満たそうとした。
そのような卑怯下劣な行為を、他国民だからと見捨てられる俺様ではない。
民を護るのが地位ある者、アルファの責任である。
アルファに進化した者には誇り高く生きる義務がある!
村の防壁を破壊し、女を犯そうとし、男を殺そうとする軍勢を叩きのめす。
千ほどの腐れ外道が絶対に逃げられないように、両膝の関節を粉々に砕く。
こんな外道では絶体にありえないのだが、自殺できないように両手首も砕く。
舌を噛んで自殺するには相当の時間がかかるので、今回は気にしない。
そもそも自分の舌を噛み切れるほどの勇気があれば自国民を虐殺しない。
相手が上官であろうと、外道な行いをしないよう諫言する。
指揮官は捕まえたが、千人程度を率いる下級指揮官の証言では証拠能力が低い。
本軍、上級指揮官がどこにいるか拷問して聞き出す。
地形と事前情報で何処に本軍がいるのか予測できているが、念には念を入れる。
俺様の予測と聞き出した情報が一致したので、敵本軍のいる場所に急ぐ。
上級指揮官と幕領がいるテント前にまで侵入する。
俺様が本気で気配を消したら誰にも気づかれない。
その気になれば一万の軍勢全てを亜空間に閉じ込める事もできる。
それどころか大規模魔術を使って一瞬に滅ぼす事もできる。
俺達人間の恐ろしさを知らしめるために、一万のバラバラ死体を作る事もできる。
だが今回は外国人の卑怯下劣を大陸中に知らさなければいけない。
多くの王家を滅ぼす正当な理由を広く周知しなければいけない。
そのために現場責任者と上級指揮官に証言させるのだ。
「自国民を犯し殺し開戦の理由にしようとした、卑怯下劣な行いを証言してもう」
俺様は自国軍に襲われそうになった村にまで戻った。
そして村人の前に引きずり出して拷問を加えてやった。
「そのような事実はない!
ギャアアアアア!」
「将軍ともあろう者が情けない悲鳴をあげるな。
お前が命令した通りになっていたら、何の訓練も受けていない民が同じ目に会わされていたのだぞ?
普段偉そうに威張っている将軍様が、村人も上げない情けない悲鳴をあげるな」
たかだか小指の生爪一枚剥いだだけで、女子供のように悲鳴をあげるとは、能力が全くないのに生まれ育ちだけで将軍に成った愚者だろう。
「言う、何でも言うから止めろ!
金が欲しいなら軍資金をやる。
だから俺様の爪を剥ぐのを止め、ギャアアアアア」
「たかが生爪一枚、生きたまま焼かれる苦しみに比べたら鼻糞同然だ。
お前が村人を襲い殺せと命じたのだろう?
人の命を奪う者は、同じように命を奪われても文句は言えないのだ。
生きたまま人を焼けと命じた者は、生きたまま焼かれても仕方がないのだ」
「俺ではない、俺がやると決めたわけではない。
王だ、王か決めて俺に命じたのだ!
俺もやりたくてやったわけでは、ギャアアアアア」
三枚目の生爪を剥いでやった。
将軍が拷問されているのを幕僚達が眼を剝いてみている。
中には小便をちびっている小心者もいる。
そんな自国の軍人達を、殺意の籠った眼で見ているのが村人達だ。
自国軍に襲われ、あわや殺されると言う所で俺様に救われたのだ。
村人達の軍人に対する殺意は高い。
「俺様は色々と忙しいので、こんな拷問に時間をかける訳にはいかない。
精々将軍の生爪二十枚を剥ぎ、二十本の指を叩き潰すくらいだ。
他の軍人の拷問は村人たちに任せたいのだが、大丈夫か?
絶対に殺してはいけないのだぞ?」
「お任せください。
命の恩人である貴男様に迷惑を掛けるような事は絶対にしません。
生きた証人が必要と言われておられますのに、殺すような事は絶対にありません。
何より殺してしまっては我々の恨みが終わってしまいます。
楽に殺したりはせず、何年何十年と苦しませてやります」
「助けてください、お願いします」
「何でも話します、嘘偽りは申しません」
「王が民を殺せと命じた事を証言させていただきます」
「将軍が嬉々として同意した事も証言させていただきます」
「途中の村で略奪や強姦を繰り返した事も証言させていただきます」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます