イタチ

第1話

長い流れの中で

私は、その文字列を目で追うのを、党の昔にやめて居た

手紙は真っ黒に、血に汚れ

それは、固形物のように、板のように、硬化しているような、質感を持ち

到底それが、紙を有した

薄っぺらい用紙だとは、理解できない

私は、滲むような黒い鉛筆の跡を、その血の黒さの中から探しながら

文字の意味する事を、注意深く、執念深く、考えを巡し

その事実が、正しいのなどうか

そして、それが、どういう意味なのかを、何度も考える

しかし、明かりのない部屋で、電灯に、浮かび上がる

その文字を、何度

いくら追いかけたところで

蛆のわいたような

私の脳細胞は、腐った考えを、消費され続けながら

意味のない事を、咀嚼し続け再生されている

この部屋には、私以外誰もいないはずなのに

しかし、どうして、私は、黒い紙を通して

何か別の存在を、覗き見ている気がしてどうしようもなくならないのである




良く晴れた山の中は、木々に遮られ

薄暗く

整頓されたように、同じような植物が、ひしめき合い

静かな均等が取れたような

生存競争を、背を低くしながら続けている

私は、その横を、掘りぬくように作られた

人間の環境破壊の道を

外来の種子を

服や靴に付けながら

汗水たらして

山を、懸命に、よじりのぼっている

さしたる、急斜面などなくても

延々と続くような

その斜面を、歩き続ければ

参道は、延々と続くような錯覚と

その終着点も頂上の頂も見えない

それに対して

次第と、コントロールをバグらせ

その計算式は、ダイエットに失敗したり

途中で、ペース配分を、失ったマラソンランナーのように、情けなく

体力を、消費し続ける

私は、一人、木々を、横目に見ながら

この燦燦たる現状と散々たる登りを、考えながら

事の発端も忘れ

山を、よじ登っている

背中のリュックでは

括りつけられた

黄金色の鈴が

ガウンガウンと、鳴り響き

私の周囲に、音を、まき散らしてはいるが

私を獲物と確認したものがいれば、

それは、良き標準と、なることは、間違いないだろう

鳴り響く鈴の音色は、山の静かさとは、かけ離れ

されど、無機物にしては、規律なく

人間の行動の不規律差を、自然が、言い表せているような気がしてならない

午前中

日が昇るような時刻から、登り始めているにもかかわらず

私の目の前の道は、果てしなく、そして、反対側の山に目をそらせば

その場所を、把握してしまいかねない位置を、緑色の中腹が眼前に広がっている

私は、一人、ため息をついて

切り株の横に

座り込む

リュックから、水筒を、取り出すと、一口飲んでから

また、一息ついた

急いだところで、答えはない

私は、一人、道の落ち葉の湿り気を

その手に感じながら

道順を、考えることにしている

考えたところで、登るしかないのだが

それでも、計画は重要だ

体が、オーバーヒートしないでくれよと

思いながらも

結構な、へとへとな、疲労感が、私の体を支配している

お菓子を食べても良いが

後にも多少なりとも残しておかなければならず

溶けにくいチョコレートが、カバンの中に、収納されている

「カコーン」

どこかで音がする

それが、何なのかは、分からないが

私は、どこかで聞き覚えがあることに気づいていた

それは、木を切る音でも

鳥の声でも

草木が、揺れる音でもない

しかし、何だったか

頭を、揺らすが、まるで、データーが一部壊れてしまったように

その部分が靄がかかったように、思い出せない

何だろう

何だっただろうか

私は、耳を澄ませたが

その音は、脳内に響くばかりであり

実際に、耳から、穴に入り

その奥の鼓膜をさらには、揺らすような、ことは、現実にはなく

私の再生機能が、脳内で、反復し

私の耳から聞こえたであろう音を、ぼやけながら繰り返しているように思う

一息ついている間にも

その音は、続く

休憩中の体と、精神が、切り離されたように、反核し

私は、十分ほどして、その二つを、途切れさせるように

起き上がると

リュックを背負いなおし

歩き出す

冷えた汗が、リュックに押しつぶされて

軽く背中を、冷やす

季節は、夏に差し掛かろうというにもかかわらず

山のせいか、天候の成果はわからないが

わずかに涼しい風が、空気が、辺りを、包んでいる

それらを、突っ切るように、私は、落ち葉に、地面に

土に

石に、足をつけて、一歩、歩き始めたのであった。



夜になったとしても

山頂は、あり続ける

しかし、私は、迷ったわけでもないはずであろうに

いまだに山の中

作られた舗装道路とは言わないが

道を山道を歩いている

昼間でさえ暗闇を影を思わせた日影は

月や星明りを遮断し

電灯がない道よりもさらに何倍も増幅させて

暗闇を濃く黒く変色させ

その中から何が出てきても

何らおかしなものではないのではないかとさえ思わせて来る

私は、リュックを握る手を、強める

しかし、そろそろ、その力は、弱まっているような気がしてならない

私は、仕方なく

寒くなり始めて

かなり経った

山の中

ゆっくりと、静かに、腰を下ろす

時折、何かの鳥の声や

叫ぶような、獣の声が、遠く下の方で、響いている

そのまま、駆け下りてやろうかとも、考えるが

しかし、ここまで来てしまった以上

いや、それよりも、私は、やらなければいけないことが、あるのだ

白いビニールの不透明な袋の中にある一枚の物品

私は、それを、背中に、考えている

どうしたものだろうか

前に、なんとなく

揺れることなく

木々の間から

わずかな浅い黒が見える

私は、前方を、道のあるものと信じて、明らかな道を、登山靴で歩いている

ライトは、持っていない

当の昔に、忘れていることに気が付いている

おかしい

そうは思っても、まだ、登頂はできてはいないのである


朝、目を覚まし

新聞受けを覗くと

見慣れない封筒が、赤い箱の中に、投函されている

それは、新聞その間に挟まるように、存在していたが

いつもと違う、感覚に、私は、新聞を、受け取ると同時に

それを、得てして、見つけて、取り出してしまった

寒い外から、中に入ると

そのまま封筒を、開封する

その時に気が付いたが

それは、厚紙のようなものではなく

中身は、はがき大の封筒の中に

見慣れぬものが

その隙間から確認している

夜に、帰宅すると、私は、郵便ポストを覗く事が、私自身として、日課にしている

故に、その時に、投函されていないとなると

それは、郵便局ではなく

宅配か新聞社と言うことになるが

しかし、新聞社が、手紙を配達するとは到底考えにくい

そしてなおかつ、八時以降に、運送会社が、無いとは言い切れないが

手紙を届けることなく

投函した記憶はなく

そして、手紙を受け取ったことはない

そういうことができるかもしれないが

無いような気がしてならない

どちらにしても、家の中に入り

私は、その黒い紙を、よく見て、異変に気が付いたわけである


校舎残頂上に、登れ

それは、そんな内容であった

近所とでもいうわけではないが

車で三十分ほどにある

その名前が、一部では、読みを変えて、校舎残なんて、いうことがある

というのも、その山の形が、それになぞらえたように、酷似しており

そんな名前が、のちに、大規模な採石場及び

スキー開発により

山の姿が変えられ

校舎の残りのような、姿を模して、最後に、残なんてことが、言われたが

たいていは、山をつけた読み方をする

これを送ってきた人間が、どういう理由で、その地元独特の

地図にも乗らないような、言葉をつかっったかは知らないし

たまたま知って、地元の人間の言葉を、そのまま引用したかは

知らないが

私は、一人、その興味深い

文章に、多少なりとも、薄暗い玄関で、明かりをつけて、考えることになる

目を近づけても

その黒に黒を、濁したような文字を負うことは非常に難解で難しく

私は、後を追うように、斜めから、筆跡を探ったり

紙の上から、その用紙に、鉛筆で、軽くこすり跡をつけて、文字を浮かび上がらせようとしたが

しかし、白い文字は、浮かぶことなく

代わりに、私は、その時になって、いよいよ、その妙な紙の正体を、考えることになる

それは、はがれることなく

まるで、軽く糊付けされたように

ノートの用紙に、引っ付いている

それを、無理やりはがし

私は、いつの間にか、何かがにじむように、赤く変色していいることに気が付いた

何だろうか

私は、紙のインクが、染み出したのではと、近場の考えを、推理にしたが

果たしてそんなことが、本当にあるのだろうか

めくる際に、幸いにして、紙の貼り付けにより

どちらかが、敗れることなく

それは、二つに分かれたが

もう片方は、インクでも、ハンコでも、押しあてたように、真っ赤に、汚れている

いよいよおかしい

紙は、黒だ

赤を濃くして、黒に近く見せかけたところで

それが、移った時

ここまで、鮮血めいた赤になるとは、思えない

それほどまでに、紙は黒く

そして、対照的に、白い紙は、赤く汚れている

何だろうか、私は、疑問に、思うも、それでも、文字を、追うことを、やめることはできない

出来なかった

「私は、あなたに、校舎残に、来てほしい

山頂で、いつまでも待っています

あなたより」

悪戯にしては、やけに手を込めたものだ

幸いにして、最悪か

私はその日、土曜日であり

そしてさしてやることもなく

私は、その日、軽い用意を澄ませると

車に乗りハンドルを、握ったことになる


夜中に、山を登ると

狐火を見たとか聞くが

たいていは、別の人間が明かりを持って歩いていた何て言うのが大抵であり

プラズマ火球 隕石でも見れた日には、幸運と言わざる負えない

私は、一人、山を歩いていると

ふいに、目の前に、大きな明かりを見た

山頂に、電柱があり、そこに明かりがあるわけもなく

それは、木々をハいずくばるように、進み、ようやく

猫の額のような、

平らな頂上に、出て、私は、それが、月だと言うことに気が付いた

周りに雲が多少浮かんでいることから

その理由が合点がいく

しかし、果たして

私はその時、ようやく、気が付き始めた

薄暗い明りの中

私は、ゆっくりと手紙を見る

どうも、その文字は、私に酷似しており


目を覚ます

毎日一番には、郵便ポストを開ける

それはいつも変わらない

今日は、土曜日だ

日曜日は、どういうわけか

一週間の中で一番疲れる

それは、仕事帰りよりも

しかし私は、毎日決められた事を

同じように、繰り返す

それに、変わりはない

私は、いつものように、玄関を開けると

狭い中庭に出て

車の横を通ると

赤い郵便ポストに、手を伸ばし始めるのであった


デジャブ

そんなものは存在しない

我々は、同じ事を、繰り返し

同じような事を

考える

さらには、学校で、削られた

規律の精神は

ただでさえ少ない人間のキャパシティーを減少させ

バラエティーを消滅させる

故に、それに半関するものは、テロリストか社長か引きこもりとなるわけだ

それとも

私は、赤い郵便ポストを、何回見たのだろう

それは、毎回違うのだろうか

世界が動いているというのであれば

それは違うといえるかもしれない

しかし、そうではなく、それは、同じだと断言するかもしれないが

しかし、私は、それに関わらず

毎回 毎日 何回も

手を、郵便ポストに、向けて、向け続けているだろうか

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イタチ @zzed9

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